『爆笑問題カーボーイ』が楽曲誕生のきっかけだった!「夢見るレディオ」で注目の音楽ユニット・UNIDOTSインタビュー

コロナ禍の中、ふと耳にしたラジオ番組にインスパイアされて誕生した曲「夢見るレディオ」が日本全国のラジオ局でオンエアされ、話題を集めています。その楽曲を手掛けたのがボーカル・瑞葵さんとベース・コンノツグヒトさんによる音楽ユニット・UNIDOTS。

注目度上昇中の「夢見るレディオ」の制作秘話、お二人のラジオとの出会いや、2ndEP「鮮明、あるいは不鮮明-clear/blur-」収録楽曲に込めた想いなどを伺いました。(※取材は2020年12月上旬)

初めて聴いた「爆笑問題カーボーイ」で驚きと喜び

――「夢見るレディオ」は瑞葵さんが自粛期間中にラジオを聴いて感じた思いを歌詞にされたそうですね。

瑞葵:2020年の春、新型コロナウイルスの影響でライブができなくなって、自分が音楽をやる意味や存在を否定されたような気持ちになっていました。悲観的になっていた時期でもあったんですね。そんな時にラジオ好きのコンノさんが「きっと瑞葵に合うよ」と教えてくれたラジオ番組が『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)でした。

初めてその番組を聴いた時に、爆笑問題の太田光さんが影絵作家の藤城清治さんの話をしていたんです。私は藤代さんの絵本を読んで育ったこともあり、大好きな作家さんの一人だったんですね。「太田さんが私の好きな作家さんの話をしてる!」という驚きと喜び。音楽でいうと「この歌詞、私のことを歌ってる!」みたいな状況が起きました。

――すごいタイミングですね!

瑞葵:太田さんの小説『マボロシの鳥』を絵本化したのが藤代さんなんです。出版されたのが2011年の東日本大震災後の5月。ちょうど震災があった時期で出版会見にも関わらず、記者の方からは絵本より震災や原発に関して質問が多かったと言っていました。

その会見で記者の方から「藤城さんの作品は電気を使って表現するアート作品ですが、自粛ムードの中で電気を使うことに対してどう思いますか。電気がなかったらどうするんですか」というちょっと意地悪な質問があったそうです。

そこで戦争を経験している藤城さんは「東京が焼け野原になって何も無い状況でも子供たちを楽しませたいという想いがあった。がれきの中から木くずや布を見つけて人形にして、ろうそくのあかりで影絵を作ったりしていた。だから、電気がなくたって自分の作品は表現できるし、関係ない。何も無くても芸術は作れる」という話を太田さんが紹介していて。それがとてもかっこいいのとものすごく感銘も受けたんです。

――この放送を聴いたのが、緊急事態宣言の時。それは響きますね。

瑞葵:自分が好きな作家さんの素敵なエピソードで、話の内容もちょうどライブができない、ステージに立てないっていう状況で特に響いたんですね。自分はステージが無くても音楽は作れるし、届けることはできるなって勇気づけられて。『爆笑問題カーボーイ』を聴いたことをきっかけに「ラジオっていいな」って思いました。

太田さん自体をテレビでしか知らなかったので「ラジオではこんな話をするんだ」とすごく驚いて。ラジオだからこそできる話があるということ、ラジオを聴くことによって自分が知らなかった世界に出会えること、そしてこんなにも救われることがあるんだなと衝撃を受けました。

爆笑問題カーボーイ
放送局:TBSラジオ
放送日時:毎週火曜 25時00分~27時00分
出演者:爆笑問題
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

いろいろな運命のタイミングが重なり、楽曲が誕生

――コンノさんは「夢見るレディオ」には作曲で参加されていますね。

コンノ:この曲は元々デモとして僕がひとりで作っていたものを元にして作りました。ユニットとして作っていたものとちょっと違って、明るいというか軽快な曲ですね。

――コンノさんがおすすめした番組が瑞葵さんにドハマりしました。

コンノ:そうなんです。瑞葵が『爆笑問題カーボーイ』を聴いて「ラジオっていいな」と思ってくれたタイミングにデモが出来ていて。「それをラジオの曲にするのはどうかな」って提案したら、即呼応してくれました。頭の中で描いていた二人のイメージを一緒に広げてくれる方とのいい出会いもあって、スピーディーに作れましたね。

2014年の春ぐらい、聴き始めた時期も鮮明に記憶

――「夢見るレディオ」はコンノさんが瑞葵さんにラジオを勧めなかったら生まれなかった楽曲です。コンノさんのラジオとの関わりについて教えてください。

コンノ:深夜ラジオが大好きなんですよ。きっかけは『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)ですね。それが今でも覚えているんですけど、2014年の春ぐらいから聴き始めました。当時アルバイトをしていたんですが、音楽を聴いてもよい職場だったんです。他人が作る音楽は自分が音楽を作る人間だから気になって集中できない。これは音楽を聴きながらやるのはムリだなと思っていろいろ試して、最終的に耳に心地良かったラジオに落ち着きましたね。

――ラジコで聴いていたんですか?

コンノ:パソコンでラジコを利用して聴いていました。ラジコはリリースされた直後から割と使っていましたね。地方のラジオを聴きたいなと思い始めてラジコプレミアムにも入りました(笑)。芸人さんのラジオはだいたい聴いていますね。バナナマンさん(『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』)も聴いていますし。オールナイトニッポンとJUNKは特に。

――番組にメールを送ったりはされますか。

コンノ:それはずっと悩んでいて、正直(笑)。

瑞葵:分かる(笑)。

コンノ:分かるでしょ?

瑞葵:周りのレベルが高過ぎて。なんでこんなに面白いんだろうと。

コンノ:世の中には面白いことを考えている人がたくさんいるんだ。しかもそこから番組のスタッフになったりしていく。そういう流れも含めてラジオには分からない深い世界がどんどん広がっているんだなと。自分だったらこう書いて送るみたいなイメージはしていますが、なかなか送れないですね(笑)。

瑞葵:ご本人に読まれたら泣いちゃうかもしれない、うれしくて。……と同時にすごい恥ずかしくなるかもしれない(笑)。

オードリーのオールナイトニッポン
放送局:ニッポン放送
放送日時:毎週土曜 25時00分~27時00分
出演者:オードリー(若林正恭/春日俊彰)
番組ホームページ
公式Twitter

twitterハッシュタグは「#annkw」

※放送情報は変更となる場合があります。

JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD
放送局:TBSラジオ
放送日時:毎週金曜 25時00分~27時00分
出演者:バナナマン
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

YouTubeで夢のパーソナリティデビュー

――お二人のラジオ好きが高じてYouTubeでラジオ番組「夢見るラジオ」を配信されていますね。お二人がパーソナリティをされています。

コンノラジオが好きだっていう気持ちが伝わればいいなと思って配信しています(笑)。

瑞葵:ラジオの形をやってみたかったんですよね。気を抜くと福島出身なので、なまりが出てきてしまう(笑)。

状況が一変してからのライブツアーで

――「夢見るレディオ」も収録された2ndEP「鮮明、あるいは不鮮明-clear/blur-」がリリースされ、本来6月から開催されるはずだった東名阪ツアーを2020年10月から行いました。

瑞葵:東京、名古屋、大阪を有観客で、東京だけライブ配信も行いました。久々のライブだったので、緊張とかうまくできるかっていうよりも、本当にみんなに会えるって喜びがとにかく強くて。こんなに純粋に「会えてうれしいな」っていう経験は初めてでした。こんなに自分は「来てくれるみんなを必要としていたんだな」ということを再確認できたツアーでしたね。

コンノ:ステージ上で横から瑞葵を見ていて、気持ちがすごく伝わってきましたね。瑞葵も言っていた通り、ライブに向かっていく気持ちってよく言えばストイックというか。まっすぐにそれだけを考えて集中していく時間。その分、ライブというものを一個一個大事にしているし、それだけ大きなものだと二人とも捉えているんです。

――前回のライブから1年ほどの間に状況が変わりました。

コンノ:今回のライブはお客さんとの感情のやりとりがしにくい状況だったと思います。でも、お客さんからマスクしていても座っていても、伝わるものがすごくあったんですよ。「今やりとりできているな、これってなんだろう」と思うくらい。目線だったり、手だったり、見えている情報から気持ちが全部伝わってくる。その経験が本当に初めてで。だから座っていても、思い思いに動くことができなくても、声を出せなくてもむしろ今までよりお客さん一人一人の感情が手に取るように感じ取れました。

瑞葵:「生きていてよかったね」っていう気持ちをお客さんたちとお互いに確認し合えたような気がします。

――ライブ配信を行ったことで影響はありましたか。

瑞葵:会場限定発売のCDをオフィシャルサイトで通信販売できるようになったんです。今までライブに来てない方で映像を見てくれた方がCDを買ってくれているみたいでうれしく思いました。「ああこんなにちゃんと全国に届いたんだなと。それが配信のいいところだな」って。

――今回ライブで披露された2ndEPの楽曲はリモートで制作されたんですか。

コンノ:ゼロからイチにする段階は二人で会って話し合いました。その後は、メールで何百回とやりとりしたり、Zoomを使ったりもしましたね。録音もだいたい家で行っていました。レコーディングの時もスタジオに入れる人数も制限されてしまって。作業を分散してリモートで制作という形になりましたね。

――歌詞や曲の内容にもコロナの影響が。

瑞葵:全曲に影響していますね。

コンノUNIDOTSの音楽観の一部ではあるんですけど、その時々に起きていることや自分たちの状況を作品の中に落とし込んでいます。それが音楽でできるひとつの素晴らしいところだと思っているので。自分たちが生きている時代の世の中の情勢や世相なども含めています。

あとから作品を見返した時に2020年だからこのメロディができたというものでないと、自分たちとしてはそこを生きた証にならなくて。特にそれが伝わりやすい形になっているのが歌詞。今回の作品は一節一節にその時の感情にシンクロしたものを今まで以上にたくさん入れ込みましたね。

瑞葵:特に影響が強いのが「溺れた魚」ですね。5曲の中にはコロナに対して、この状況に対しての喜怒哀楽みたいなものが散りばめられています。「溺れた魚」という曲は怒り、理不尽なものに対する無力感とかそういう強い気持ち。「潜熱」という曲だったら悲しみ、喪失感から得たものとか。自粛期間に出来た感情を各曲に散りばめていくんですけど、やっぱり最後は希望が残っていてほしいなという想いは込めていますね。

2021年は自己発信していく

――いろいろあった2020年が終わり、2021年になりました。お二人が今年やりたいことはありますか。

瑞葵:今までやらなかったことにどんどんチャレンジしていきたいですね。YouTubeラジオも続けていきたいです。

コンノ:今回ラジオの曲が出来てラジオ局の方々に流していただいたりしています。自分たちが聴いてほしいと思ったら、自分たちからリクエストしてもいいかなと(笑)。自己発信ですね。そのひとつがYouTubeラジオ。ラジオが好きだから本当はラジコで流せたらいいんですけどね(笑)。YouTubeのラジオの中で演奏してもいいし、ライブに近いようなやり方で音楽も取り入れていきたいなと。

――ミュージシャンの方の番組なので音楽を取り入れるのはいいですね。

コンノ:二人で演奏しているものとか、何かできる形はあるなと。ツアーが終わってから自己発信についていろいろ勉強しています。ライブ会場に行かなくても、家にいてみんなで共有できるものを作って発信したいですね。

瑞葵:もう一個やりたいことがありました!! コンノさんとも話していたんですけど、「夢見るレディオ」の裏版みたいな曲。FMも好きなんですけどAMも好きなので、もっとマニアックなAM感の強い「夢見るレディオ」を作ってみたいなと。

――今の「夢見るレディオ」はFMのイメージなんですか。

瑞葵:FMやAMを聴いているリスナーの1日の流れみたいなものが今の「夢見るレディオ」ですね。

コンノ:例えば、ハガキ職人から構成作家になったという話を歌にしたっていいわけじゃないですか(笑)。

――「夢見るレディオ」でミニアルバムができそうですね。ミキサーとかディレクター、パーソナリティ版とか(笑)。

瑞葵:作ってみたい! ラジオアルバム(笑)。

――最後にradiko news読者へメッセージをお願いします。

瑞葵:気持ちが落ち込んだり、ちょっとつまんないなっていう日々が続いたりした時にUNIDOTSの音楽やYouTubeのラジオを聴いてほしいですね。気分が少しでも明るくなればうれしいなと思います。

コンノ:「自分たちに会いに来てくれるのを待つんじゃなくて、自分たちから会いにいくよ」という気持ちを伝えたいです。自分たちがやっているYouTubeラジオってまさにそういうものだし、常にそういう姿勢を持っていたいです。2020年がそう思わせられた1年だったんで。

【UNIDOTSプロフィール】
2016年より活動スタート。CD音源等のリリースを一切行わない中、2017年には渋谷eggmanでの初ワンマンライブ、2018年SHIKISAI2018と題し年4回開催のツーマンライブを全てSOLD OUT。

2019年11月には1st EP「複雑因子 - complex factor -」をリリースし、渋谷CLUB QUATTROを皮切りに、東名阪ワンマンツアーを大成功に収める。

2020年UNIDOTS Live Tour 2020 鮮明 – clear/blur -を開催。

さらにツアー初日から2nd EP『鮮明 、あるいは 不鮮明 - clear/blur -』をリリース、2021年1月13日には主要配信ストアにて配信をスタート!

また2014年より瑞葵が「mizuki」名義で澤野弘之氏によるボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト「SawanoHiroyuki[nZk]」に参加。テレビアニメ『アルドノア・ゼロ』EDテーマ「A/Z」「aLIEz」でゲストヴォーカルとしても活躍。

最近ではSUGIZO監修 「機動戦士ガンダム 40th Anniversary Album ~BEYOND~」にEGO/澤野弘之 feat. mizuki&SUGIZOとして参加。

草野華余子作詞作曲、堀江晶太編曲によるスマホゲーム『三国志名将伝』の主題歌「不屈の野生~Tiger in my heart~」を歌唱。

2020年に公開された「THE FIRST TAKE 」SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki – aLIEzにボーカルとして参加。

UNIDOTS OFFICIAL WEB SITEはこちら

この記事を書いた人

高田りぶれ(たかだ・りぶれ)

山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。

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村上春樹「自分のカヌーは自分で漕げ」学生時代にカート・ヴォネガットの小説で出会った言葉

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。4月28日(日)の放送は「村上RADIO~村上の世間話4~」をオンエア。好評の「村上の世間話」シリーズ第4弾は、クスッと笑える“世間話”を、村上DJが選曲したグッドミュージックとともにお届けしました。
この記事では「今日の言葉」について語ったパートを紹介します。



◆The Sandpipers「Chotto Matte Kudasai」
サンドパイパーズが歌います。「ちょっと待ってください」というのが曲のオリジナル・タイトルなんです。マジで。

◆TSF「Salade de Fruits」
TSFというフランスのボーカル・グループが「フルーツ・サラダの歌」を歌います。

トマト・サラダも好きだけど、フルーツ・サラダもいいですよね。マンゴー入りのサラダが僕の好物です。



◆<クロージング曲>
Barney Wilen「As Time Goes By」

今日のクロージング音楽、フランス人のベテランテナーサックス奏者バルネ・ウィランが「As Time Goes By」を演奏します。いいですねえ。決めの歌詞、「月の光とラブソングが、時代遅れになることはない」。本当にそのとおりです。

ちなみに今日おかけした音楽は、すべて僕が最近中古屋さんのバーゲンで買い込んできたCDです。値段は100円か200円か、高くて300円。そんなものです。バーゲン・コーナー、こまめに探すとけっこう素敵なものに巡り会えますよ。

さて、今日の言葉は、
「Paddle Your Own Canoe(自分のカヌーは自分で漕げ)」です。

これはボーイスカウトのモットーにもなっていますが、もともとは英国の古い格言です。でも僕がこの言葉を初めて知ったのは、学生時代にカート・ヴォネガットの小説『スラップスティック』を読んだときです。その中でこの言葉はとても印象的に使われていて、今でもよく覚えています。『スラップスティック』、愉快な小説ですよね。先日久しぶりに読み返して、あらためて感心しました。

「自分のカヌーは自分で漕げ」。要するに自分のことは人に頼らずに、自分でしっかりやれということですよね。

でも「自分のことは自分でやれ」と言うと、身も蓋もないというか、ごく当たり前の「ご教訓」になってしまいます。でも「自分のカヌーは自分で漕げ」って言われると、そのシチュエーションが目の前に浮かんできますよね。実際にカヌーに乗って、パドルを手にして、1人で急流を乗り切っているような、そんな具体的な気持ちになります。「がんばらなくちゃ」、みたいな。

言葉の力って、表現の力って、結局そういうことなんですよね。生きた具体的な共通イメージを、送り手と受け手の間に起ち上げること。僕はいつもそのことを頭に置いて文章を書いています。それって大事なことです。

「自分のカヌーは自分で漕げ」

漕いでください。



番組では他にも、ほとんど夢を見ないという村上さんが鮮明に覚えているという“夢の話”から、近所をジョギングしているときにある動物に遭遇したときのエピソード、学生時代の夏休みに一人旅をしたときの思い出などについて語る場面もありました。

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4月28日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 5月6日(月・祝)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO~村上の世間話4~
放送日時:4月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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