山梨県が空港新設の検討開始を表明、その理由とは?

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。7月7日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、山梨県の長崎幸太郎知事が表明した、山梨県内への空港新設の検討について解説しました。

松田:5月26日の記者会見で長崎知事は2027年のリニア中央新幹線の開業予定に合わせた「山梨県内への空港新設の検討」を表明しました。今日はこのお話です。

麻耶:空港新設は山梨県にとって関心が高いと思われますが、以前から検討されていたお話なのでしょうか。

松田:私は会見には出ていませんが会見後、取材すると、県事務方が知ったのは5月に入ってからという話で、その意味では以前から出ていた話ではないと思います。さて、リニア中央新幹線はJR東海が5年後の2027年の開業を目指していますが、リニアのルート上にある大井川水系の水量減少に難色を示す静岡県と、事業者であるJR東海との話し合いがつかず、静岡工区の工事ができず、全線開業は遅れるのではないかと見られています。ただ、開通すれば品川とリニア「山梨県駅」(仮称、甲府市大津町)が24分で結ばれます。県は新駅を起点とする県内の道路交通網を発展させ、首都圏からの経済効果を、甲府に限定せず県内全体に波及させることを狙っていますから、リニア開通は本県にとっての悲願なのです。そこで新空港整備は何を意味するのかといえば、リニア開通時に1時間に1本の運行本数とすれば、増発できた方がいい。そのためには、山梨県としても、リニア新幹線の利用者を増やす仕掛け―知事の言葉で言えば「人と富が山梨に集まる理由」が必要ということになります。

麻耶:空港開設は、仕掛けの一つなのですね。会見ではどこまで具体的なお話をされているのでしょうか。

松田:私見ですが、究極の理想は、リニア山梨県駅の隣に空港ができれば、乗り換えがスムーズで一番いいいに決まっています。ただ、今までにそのような話は聞いたことがありません。難しいのでしょう。そこで会見の内容を見ると、「短時間でアクセス可能になる場所」とした上で、「48人乗りの小型ジェット機や、プライベートジェット機の離発着ができる滑走路を設置することで、他の地方空港から東京への移動需要の受け皿となり、品川―甲府間の(リニア)需要拡大をつくりだせないか」と述べています。よくわかる話ですね。ではなぜ、小型ジェット機やプライベートジェット機というのか、国土交通省に取材すると、スペック、つまり性能の高い機材で給油しながら飛べば、国内どころか、遠い外国からの離着陸も可能で、知事は外国人富裕層を視野に入れているようなのです。ならば、富裕層の小型機は「羽田を使えばいいじゃない」となりそうですが、羽田ではこうした臨時便の離発着は、ほぼ満杯の定期便枠の隙間を使うとか、会見で言及があった小型機は駐機ができないなど「制約」があるそうです。だから、会見では「山梨が羽田の補完的役割が果たせる」という説明があったのです。

麻耶:短時間のアクセスとはどのくらいの時間なのでしょうか。また、空港を整備するとしたらどこにできる可能性があるのでしょうか。

松田:何も決まっていませんが、私見ですが、山梨新空港から品川まで1時間で行けるようにするところを狙えば30分以内が目安です。そうなると場所も限られますが、これについいて山梨県は実は1988年から空港誘致を2度、検討した経緯があって、当時、6つの候補地があったのですが、技術や採算面から断念しました。当時の書類はすでに廃棄処分され6候補地は分かりません。6候補地と重なるかどうかは分かりませんが、甲斐市に日本航空学園という航空業界で働く人材の養成学校があり、そこの滑走路のひとつを活用できないかという見方があります。中央自動車道の双葉ジャンクションの近くで、リニア山梨県駅の北側を走る中央自動車道と、新駅がスマートインターチェンジで結ばれる計画なので、アクセスが向上し選択肢のひとつとなる可能性はあります。

麻耶:今後、県の検討はどう進むのでしょうか。

松田:知事会見では、空港新設についての技術課題や社会的な可能性を探るべく「研究会」の設置が表明されました。メンバーには地元経済界や、県内有識者をはじめ県外から航空技術の専門家も参加し、航空機材や必要な滑走路など技術面に加え、山梨県の自然・生活環境、県内外への社会・経済へ及ぼす影響など様々な観点から可能性と課題を研究、検討したいとのことです。ただ、いつ、立ち上げ、研究期間がどのくらいかは分かりません。

麻耶:5年後のリニア開業を考えれば、そんなに時間がないようにも思えますが、松田さんが今、思われる課題はありますか。

松田:注目点は、新空港が既存の滑走路を活用して整備コストが小さいものになるか、一から新空港を整備して整備コストがかかるものになるのか、そして、どこにできるのかです。国土交通省によると、一から新設の場合、地方自治体が設置、管理する「地方管理空港」になり、整備費の50%を上限に国が補助するといい、非公共の民間の滑走路設備を使う場合は「非公共用飛行場」に該当しうるとのことでした。ただ、いずれにせよ、今回の空港整備検討は、リニア開業を考慮しなかった以前の検討とは違い「リニア開業が前提」になっていることです。知事会見でも「今回の議論は全く別の話。リニア開業と新空港はセットの話」と発言され、これはその通りです。ただ、研究会では、過去に過大な需要予測をして後で赤字になる地方空港が続出した歴史があるので、その反省に立てば、「はじめに、新空港の開設ありき」ではなく、過大でなく現実的な需要予測を前提に、開港による便益・経済効果と事業費・運営費という費用対効果などメリットとデメリットを整理し、県民に対し透明性が高く、分かりやすい議論と情報を示していただきたいと思います。 

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:鈴木ダイ(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
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