山梨県が推進している太陽光発電と水素の活用について解説

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。10月7日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、山梨県が推進している水素の活用について解説しました。

松田:今日は、山梨県としては、住宅や工場、ビルの「屋根設置型の太陽光発電」は逆に推進し、その電力を使って将来の重要なエネルギー源になり得る「水素」を製造しようというお話です。まず、前提となるのが、国は2050年に温室効果ガスであるCO2排出量を実質にゼロにする「カーボン・ニュートラル」を実現する目標を掲げていることです。数ある温暖化防止技術の中でも水素は大変、有望視され、長崎知事の肝入りで山梨県は水素分野で先頭を走ろうということです。

麻耶:水素は私たちの生活や企業の生産活動でどのような利用が想定されているのでしょうか。

松田:麻耶さん、野菜の地産地消ってよく聞くと思いますが、野菜がとれた場所で消費することですよね。エネルギーでも地産地消があります。住宅や工場の屋根の太陽光発電で生み出した電気をその場で使うことです。水素利用はこの電気を使い、工場や住宅地区単位で水を「水素」に電気分解して「地産地消」として使います。水はH2Oです。水素のHと酸素のOを融合したものですが、水に電気を通電するとHとOに分解され水素が取り出せます。そして、水素は「水素ボイラー」で天然ガスや重油の代わりに“燃料”として使えます。都市ガスも将来、水素に代わるかもしれません。水素はまた、電気と違い、液化水素として貯蔵・運搬もできます。山梨県では、太陽光発電による電気で作る水素なので、化石燃料に由来しない「グリーン水素」です。

麻耶:山梨県の水素技術の開発状況はどうなのでしょうか。

松田:「P2Gシステム」と呼ばれる「水」を電解する装置を実用化し、出力アップの開発を急いでいます。2016年から県と東レと東京電力が甲府の米倉山の研究サイトで、NEDOという国の機関から助成を受け、現在、出力1.5メガワットのP2Gを開発。昨年9月、国のグリーンイノベーション基金の第1号案件に採択され、2025年までに基金が100億円を出し、出力を現在の10倍の16メガワットに拡大、後で触れますがサントリー白州工場が導入を発表しました。

麻耶:P2Gシステムは、どのような特色があるのでしょうか。

松田:東レの「固体電解質膜」を使った「固体高分子形水電解装置」で、エネルギー効率が87%と非常に高いのが特徴です。一方、競合する旭化成の「アルカリ水電解装置」は出力10メガワットで、これは原子力のような「安定電源」なら非常に優位ですが、太陽光発電という、天候に左右される「不安定電源」では、東レの固体高分子形の方が、非常に相性が良いです。東レのP2Gシステムは、出力は旭化成よりも小さい。けれども、乾電池のようにつなげれば大きな出力が出せるので、分散型設置でも集中設置でも良く、使い勝手や応用範囲が広いのです。

山梨県内企業の導入状況は?

麻耶:さきほど、サントリー白州工場のお話がありましたが、他の企業も含め山梨県内の導入状況を教えていただけますか。

松田:県内では昨年6月から、日立パワーデバイスの半導体工場が水素を「水素ボイラー」で活用し、また、スーパーのオギノは甲府市内の店舗で水素を燃料電池に供給し、レジや照明の電気として使っています。2024年には、UCC上島珈琲が笛吹市の工場の建て替えに合わせて導入。サントリーも2024年度末に、今の10倍の出力16メガワットのP2Gを導入、天然水の煮沸から始め、ウイスキーの蒸留で利用する計画です。

麻耶:水を電気分解して取り出した水素の利用が当たり前になる時代が近くまで来ていると感じました。今後の課題についてはどうお考えですか。

松田:長崎知事によると、最大の課題は実用化のスピード。水素技術の開発は世界との競争になっているからで、知事は「2030年ごろまでに中東と手を組み、オイルマネーで資金手当てをして開発を加速、グローバルトップを狙いたい」と取材に答えました。もうひとつ、水素は無色で臭いがない。家庭で使う場合、ガス漏れのリスクを考えなくてはなりません。ガス会社は都市ガスを一気に水素に変えず、少しずつ混ぜるプロセスを踏むのでしょうが、防災面の対策は必須だと思います。あと問題なのは、水素製造に使う「太陽光パネル(電池)」の国産品が極めて少ないこと。資源エネルギー庁から紹介してもらった民間調査によると、太陽光電池生産の2021年の国別シェアは、中国が75%と断トツで、日本はわずか0.2%。中国製太陽光パネルが対中関係悪化で減ったり、止まれば、日本国内の太陽光発電と水素製造に重大な影響が出ます。エネルギー供給源を外国に握られるのは愚策で危険。ロシアがウクライナ侵略で、ドイツなど欧州への天然ガス供給を極端に絞り恫喝しています。ですから、国は国産太陽光パネルの量産に早急に取り組むべきです。

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:鈴木ダイ(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
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