玄理が語る、「女優がラジオ番組を持つ」ことで生まれるいい作用
玄理はただスタジオで話すだけでなく、スタッフとともにソーシャルグッドな活動も実践している。自分の感覚もオンエアに活かす彼女にとって、ラジオという仕事はどういった存在なのか。その楽しさや、女優の仕事との違いを探るとともに、読者におすすめしたい一曲も訊いた。
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ラジオはリスナーの「居場所」になる。グローバーが心がける、“会話をリラックスして楽しむ”届け方
言葉より行動に重きを置きながら、リスナーとつながっていく
──2017年10月から番組が始まって、もうすぐ4年を迎えますね。日々番組をどんな気持ちで届けていますか。海中のごみをスキューバダイビングしながら拾ったり、いらなくなった子ども服をデザイナーさんとリメイクしたりなど、日曜朝9時~12時という枠を飛び出してスタッフとともにさまざまな活動をする機会が増えてきました。私自身、実際にやってみたことの方が説得力もあるし、言葉より行動に重きを置きたいなと思っているんです。実際に身体を使って、自分たちにできることを楽しみながらやっています。
──ラジオの醍醐味といえば、番組リスナーとコミュニケーションもあると思います。玄理さんはどう感じていますか?
例えば映画だと、企画から完成までに、大体2~3年、あるいはそれ以上かかります。これがラジオだと、生放送ということもあって、伝えたいことをすぐにシェアできる楽しさがあります。リスナーの方から、すごく心のこもった長文のメッセージをいただくことも多いんですよ。一方的にメールを読み上げるのではなく、私の話に対して「自分はこう思うよ」と語りかけてくださったメッセージを伝えていく。そんな言葉のキャッチボールをする時間がすごく好きなんです。
去年はコロナ禍で、撮影が止まってしまうこともありました。友だちとも会えないような社会情勢の中で、「毎週日曜日の朝、番組でリスナーさんと話せる」ことが、私の支えにもなっていました。
SDGsは「誰も置き去りにしない」優しさと強さを感じる
──『ACROSS THE SKY』は、さまざまなSDGsアクションを実践されていますよね。SDGsに対してどんな思いを抱いていますか?「SDGs」という言葉を聞くと、環境問題やジェンダーギャップ、マイノリティの方への配慮など、それぞれの項目を思い浮かべる方も多いと思います。でも、私は項目よりSDGsの「誰一人置いてきぼりにしない」という理念のほうが心に残っているんです。当事者も、第三者も、関心がある人も、ない人も。その誰も排除しないという姿勢と、完璧さよりも持続可能性を追求しているところが、優しくて、そして強くて好きです。
──先ほど、海でのごみ拾いをされていると話していましたね。玄理さんが企画を提案しているんですか?
そうです。去年、スキューバダイビングの資格取りに行ったときに「水中クリーンナップ」という活動を知ったのがきっかけでした。「ただ潜るだけだともったいないな」と思って、スタッフを「スキューバ体験しませんか?」と誘いました(笑)。部活ノリのような感じで、みんなで楽しみながらごみ拾いをしましたね。“少し社会を良くする”くらいの、「私にもできそう」と思ったものは、積極的に提案しています。
女優とラジオ、全く異なる仕事が生む相互作用
──玄理さんは女優として活躍されていますが、女優の仕事とラジオの仕事、それぞれから得られるものにはどんな違いがありますか?本当に違うところばかりなんです(笑)。ラジオの仕事を始めた当時は、私も違うところばかりに目がいっていました。女優は脚本家の方が書いてくださった言葉を喋ることが仕事なので、ラジオで自分の意見を自分の言葉で表現するということがすごく怖かった。それに、映像だったら身振り手振りや表情で伝わるニュアンスが、やっぱり声だけになってしまうとなかなか伝わりづらくなってしまう。
でも最近は、ラジオと女優の仕事で、いい相互作用が生まれているなと思うことも多いんです。例えば、出演する作品の役についてリサーチする過程で興味を持ったことを番組に提案できたり、逆に実際に記者の役をやったときは、J-WAVEの先輩である堀 潤さんにお話を聞かせてもらいました。あとは、ドラマや映画で共演してる方たちに、ゲストとして番組に出てもらうこともできますよね。
──映画『スパイの妻』の黒沢清監督などもゲスト出演されていましたね。
黒沢監督は、つながりがないとなかなかラジオに出演されない方だと思うので、出演いただけたのはうれしかったですね。あと、ドラマや映画をきっかけに私を知ってラジオを聴いてまた違う印象を持ってくれたり、作品の主題歌をいち早くオンエアで流せたり……それぞれの相互作用を、すごくプラスに捉えています。
同じ表現者として尊敬するBTSの楽曲は?
――玄理さんがリスナーに紹介したい、おすすめの一曲を教えてください。BTSの『Butter』です。出演する歌番組によって振付を少しずつ変えているのを見て、計り知れない努力を感じました。同じ表現者として尊敬しています。『Dynamite』で今まで出したことない記録をつくった上で、『Butter』というすばらしい楽曲を新たに生み出すのがすごいですよね。
――よくInstagramのストーリーでも「今週のBTS」と題して、オンエアしてほしい曲のアンケートをとっていますよね。
そうなんです。リスナーもBTSを流すとすごく喜んでくださる年代の方が多いかなと思うので、番組でもよくかけているんです。
――BTSのどんなところが好きですか?
BTSがデビューした当時のK-POPは、「俺についてこい」みたいなタフなアイドルが主流だったと思うのですが、次第に彼らは自分たちの年代の痛みや悩み、孤独など今までになかったようなものを表現するようになって素敵だなと思いました。あと、彼らが次に出会ったテーマが「セルフラブ」。やっぱり人前に立つといい声も悪い声も届くと思うんですけど、そんな彼らが「セルフラブは大事なことだ」と提案していくのは、とても大事なことだと思います。文字にすると「そんなのわかってるよ」って感じなんですけど、あらためて彼らが伝えることで実際に世の中が善くなっている。ただパフォーマンスがかっこいいだけじゃなくて、その奥にある理念も尊敬しています。
(取材・文=J-WAVE NEWS編集部)
■玄理プロフィール
1986年12月18日生まれ。東京都出身。
日本語・英語・韓国語の トライリンガル。
中学校時代にイギリス短期留学、大学在学中に韓国に演技留学。2014年の主演映画『水の声を聞く』で第29回高崎映画祭最優秀新進女優賞、2017年にソウル国際ドラマアワードにてアジアスタープライズをそれぞれ受賞した。近年の出演作は映画「スパイの妻」「偶然と想像」ドラマ「君と世界が終わる日に」など。