「よく眠る会社は業績が伸びる」睡眠時間が企業の利益率を左右する理由

日本人の睡眠時間は世界最下位レベルとされていますが、今「よく眠る会社は業績が伸びる」という事実が注目されています。従業員の睡眠時間を確保することが、いかに企業の利益率に直結するのか。4月22日放送のRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』に出演した、慶應義塾大学商学部教授の山本勲氏がその理由について解説しました。

「よく眠る会社」ほど利益率が高いという相関関係

上場企業のデータを活用した統計的な分析によると、従業員がしっかりと睡眠時間を確保し、良質な睡眠をとっている企業ほど、利益率や売上高が良い傾向にあることが明らかになっています。山本氏は、睡眠不足の状態で無理に働くことの弊害を指摘します。

睡眠不足による悪影響: 集中力や判断力が低下してミスが増えるだけでなく、周囲に強く当たってしまうなど社内の雰囲気悪化にもつながります。

快眠によるメリット: 頭が冴えた状態で良好な人間関係を保ちながら働くことで、業務効率と生産性が高まり、結果として利益率の向上に寄与します。

かつての「24時間戦えますか」という根性論から、いかに効率を上げ、労働時間を短縮して質を高めるかという方向へ、企業の考え方は完全にシフトしています。

企業に求められる「睡眠をサポートする環境」

従業員の多くが共働きなどで家庭でも多忙な中、企業が睡眠時間をサポートするために最も重要なのは、環境の整備です。

長時間労働の削減: 夜遅くまで残業する環境をなくし、例えば19時には仕事を終えられるようにすることで、個人が睡眠時間をやりくりできる余地を生み出します。

勤務間インターバル制度: 終業から翌日の始業までに一定時間の休息を設ける制度です。欧州などで義務化されているこの制度を導入している企業では、従業員の睡眠時間が確保されていることが統計でも示されています。

仮眠室や「パワーナップ」の導入事例

勤務時間中に短時間の仮眠(パワーナップ)を推奨する企業も増えています。

外資系大手企業: 米国のIT大手企業や世界的スポーツブランドでは、社内に専用の設備や休息をとれる部屋を設置し、自由に活用できるようにしています。

国内大手不動産会社: 本社の移転に合わせて仮眠室を整備し、15分から30分程度の仮眠を推奨しています。

国内寝具メーカー: 照明や音を活用して、短時間でも心地よく目覚められるような工夫を施した専用ルームを設けています。

コストをかけない工夫: 特別な設備がなくても、昼休み中に照明を暗くして机の上で自由に休めるようにしている企業も多く存在します。

睡眠は重要な「経営テーマ」

従業員の給与や福利厚生と同様に、睡眠時間の確保もまた、経営陣が取り組むべき重要なテーマとなっています。労働時間が長い日本において、企業側が配慮を行うことは、最終的に生産性を高め、業績向上という形で企業に戻ってきます。

4月に福岡市で「ふくおか睡眠フェア2026」開催!

睡眠についてより深く学べるイベントが開催されます。内村理事長も登壇されるほか、元プロ体操選手の内村航平さんや競泳オリンピックメダリストの松田丈志さんら超一流アスリートも加わり、睡眠の極意を徹底解剖します。

4月24日(金): 企業向けビジネスデー(ホテルニューオータニ博多)
4月25日(土)・26日(日): 一般向けフェア(電気ビルみらいホール)
入場料: 無料(講演については事前予約制)
申込: 「ふくおか睡眠フェア2026」特設サイトからお申し込みください。
https://rkb.jp/Fukuoka-suiminfair2026/

山本 勲氏
慶應義塾大学商学部教授。ブラウン大学博士(経済学)。専門は労働経済学。主な著書として、『コロナ禍と家計のレジリエンス格差』(編著)慶應義塾大学出版会、『人工知能と経済』(編著)勁草書房、『労働時間の経済分析』(共著)日本経済新聞出版社、『実証分析のための計量経済学』中央経済社。

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、橋本由紀
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※放送情報は変更となる場合があります。

ボブ・ディランの歌詞は「翻訳不可能」⁉ 村上春樹と柴田元幸が語る、シンプルな英語だからこその難しさ

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」。11月3日(火・祝)は、特別番組として『村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~』をオンエア。今回は早稲田大学国際文学館の開館5周年を記念し、10月1日に小野記念講堂で開催された公開録音イベントの模様をお届けしました。

盟友である翻訳家の柴田元幸さんを迎え、進行役の坂本美雨さんとともに「音楽で仮定法を学ぶ」をテーマに白熱の翻訳談議を展開。ビーチ・ボーイズやエディット・ピアフなどの名曲に乗せて英語表現のニュアンスを紐解いたほか、方言・スラングの訳し方やAI時代における翻訳の未来、参加者からのQ&Aまで、言葉と文学の魅力が詰まった贅沢な時間となりました。

この記事では、この記事ではオープニングトークと、前半2曲について語った内容を紹介します。


(写真左から)坂本美雨さん、村上春樹さん、柴田元幸さん



◆Bread「If」

村上)では次いきますね。次は文字通りの「If」。これはもう仮定法以外ではありえないという選曲です。ブレッドが歌います。

<ブレッドの曲が流れる>

村上)この曲は僕が選んだんですけど、これ、歌詞がいいんですよね。

柴田)さっきの「If I Were a Bell」がすごくコミカルな比喩の連発だったとすると、こっちはちょっと教養がかっているんですね。いちばん初めのところが「If a picture paints a thousand words」、もしも絵というものが千の言葉を描けるなら、という言い方。なんで千かっていうと、「A picture is worth~(~の価値がある)」「A picture is worth a thousand words(一枚絵を見せれば千の言葉の値打ちがある/千の言葉と同じくらい多くのことが一枚の絵で伝わる)」という決まり文句があります。それを踏まえてるんですよね。

村上)あとは「If a face could launch a thousand ships(一つの顔が千の船を出帆させられるなら)」これは(ホメロスの叙事詩)「オデュッセイアー」の……。この間、映画「オデュッセイアー」を観てきて、その中でも出てましたね。ヘレネー、すごくきれいな人が千の船を進水させるんですよね。

柴田)ギリシャのあの辺はみんな海に国が面しているから、いくさに行くというと、まず船に乗るわけですね。美女ヘレネーを争っていくさが始まる。そうすると船がバーッと出るっていうことで、「The face that launched a thousand ships」という、その千の船をローンチ、出帆させた顔という決まり文句があるわけです。

村上)あと僕が好きなのは「一度に2ヵ所にいられるものなら、君と一緒に明日と今日にいたい。ずっと君のそばで」。これはロマンチックですね。

柴田)これは気が利いてますね。やっぱりデヴィッド・ゲイツという人は本当に秀才型ですね。

◆Bob Dylan「If Not for You」

村上)次は「If Not for You / Bob Dylan」。これは柴田さんの選曲ですね

柴田)高校の授業で多分みなさん習いますよね。If it were not for~(もし~がなかったら)、そういうフレーズがあるわけですけど。ずいぶん長いですよね。実際には、こういうふうに「If not for」という三語に縮めて、同じく「もし~がなかったら」という言い方に日常ではなることが多いです。まさにそれを使ってディランが「If Not for You(君がいなかったら)」という曲を作っています。

村上)僕が最初にこの曲を聴いた時、まだ高校生か何かで、「If not for you」がどういう意味かちょっとよくわかんなかったですね。

柴田)これは本当にフレーズの意味を知らないとわかりにくいですね。「If it were not for you」が「If not for you」というシンプルなフレーズに直されているということ。そして、この曲でやっぱり見事だと思うのは、ディランは音もすごいシンプルですけど、言葉もシンプルなんですよね。

村上)「If not for you, my sky would fall」は、エディット・ピアフも同じようなことを歌ってましたね。

柴田)確かに。簡単な言葉なんだけど、過激なことを言ったりもするんですね。あと「But it would not be new / If not for you(君がいなかったら、虚しく朝の光を待ってるだろう、朝の光が来ても、その光は君がいないから新しくないだろう)」と。new(ニュー)とyou(ユー)の韻の踏み方とか、こういうのは本当にもう翻訳じゃ全然よさを出せないですよね。

<ボブ・ディランの曲が流れる>

村上)なるほど。本当にボブ・ディランの歌詞って翻訳不可能なものが多いですよね。

柴田)かえって「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」とか、難しい言葉を使ってくれるほうが訳しようがあるんだけど、この時期のアルバムとか、「ニュー・モーニング」か、あと「ジョン・ウェズリー・ハーディング」とか、あのあたりのシンプルな構成で作った歌は、本当にシンプルさこそが一番訳しにくい感じですね。

村上)僕が仮定法に興味を持つようになったのは、翻訳をやるようになってからです。仮定法をどう訳すかというのがすごく大事なんだなというのがわかってきたんですよね。
学校の時はあまり興味を持てなかったんですよね。嫌だなと思ってたからね。でも、仮定法を理解してないとうまく理解できないんですよ。

柴田)要するに、そこに書かれていることが事実か事実じゃないかっていうのが、文法のサインからわかるわけですよね。

村上)あとif~で、~wouldとかcouldだとわかりやすいんだけど、前がない場合が多いんですよね。だから、それは仮定法がわかってないとなかなか訳しづらいんですね。

◆The Beach Boys「Wouldn't It Be Nice」

村上)次は柴田さんの選曲でビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」。

柴田)これはですね、「Wouldn't it be nice(素敵じゃないか)」という、ご存知の方も多い曲だと思うのですが、ちょっと珍しいバージョンでお聴きいただきます。

<ビーチ・ボーイズの曲が流れる>

村上)素敵な曲ですよね。

柴田)素晴らしいアカペラ・バージョンで聴いていただきました。これはもちろん「Wouldn't it be nice(素敵じゃないかい)」というところが仮定法ですが、「Wouldn't it be nice if...」まで一緒に覚えていただくと、使い方がすごく広がります。itっていうのはいわゆるあんまり文法用語は使いたくないんですけど、仮主語っていうやつで、長い話をしたいときにとりあえずitと言っておいて、その後詳しく言うという仕組み。「Wouldn't it be nice if...(もしこうこうこうだったら、それは素敵じゃないだろうか)」という言い方ですね。要するに、今はまだ自分たちは子どもで自由が利かないけど、大人になったら何でもできるのにという、そういう楽天的な歌なんだけど、やっぱりビーチ・ボーイズがやるとどこか陰りがありますね。

村上)あの、状況説明をしますと、1960年代の半ばの歌ですよね。当時は結婚しなければセックスはできないということだったんです。だからこの歌では高校生同士のカップルで、このまま大人になれたらすぐに“やれる”のにね。という“やれる”って、言っちゃいけないのか、すぐに仲良くなれるのにね、ということが切実なんですよね。

柴田)そうですね。僕が一番好きなところは「Maybe if we think, and wish, and hope, and pray(もし考えて願って望んで祈ったら), it might come true(実現するかも)」。もうちょっと待てば実現するんですけど……。

村上)might come trueなんですね。

柴田)どこか物事がうまくいかないかもしれないというのが見えちゃってるような響きですね。ブライアン・ウィルソンの生きた人生とか、そういうこともつい考えてしまうので、余計そういうふうに思うのかもしれないんですけどね。

村上)でもこれはやっぱりすごく心がこもった歌だと僕は思います。

柴田)長年聴いていると本当にそう思うようになりました。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~
放送日時:2026年11月3日(火・祝) 14:00~15:55
出演:村上春樹、柴田元幸、坂本美雨
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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