「スポーツを楽しんでいる状態がゾーンに入れる要因です」メンタルトレーニングの第一人者から聞くゾーンの入り方
TBSラジオで平日15時30分から放送中の「ACTION」。水曜パーソナリティは、Creepy NutsのDJ松永さん。
7月1日(水)のゲストは、東海大学教授の高妻容一さん。ご専門はスポーツ心理学で、日本のメンタルトレーニングの第一人者であります。先週の放送は「ゾーンに入る」話で盛り上がりましたが、そんなゾーンについて高妻さんから科学的根拠に基づいた話をDJ松永さんが伺いました。
松永:そもそもゾーンはあるという解釈で大丈夫でしたか?
高妻:僕らはゾーンに入るためのトレーニングを指導していますよ。
幸坂:トレーニングで入ることができるんですか?
高妻:可能性を高めますね。必ず入れるものではないですが、トレーニングを積むことによってゾーンの状態に入れる可能性を広げることはできます。
松永:「ゾーンに入る」とはどういうことを指すんですか?
高妻:例えば周りの動きがスローに見えるとか。ボールが止まって見えるとか。ゴルフのホールが大きく見えるとか。あと海外では神がかったことを言う人が多いです。マラソン選手が「神様が引っ張ってくれた」とか。
松永:皆がゾーンに入った状況のその伝え方は人それぞれなんですね。
松永:ゾーンに入るためのメンタルトレーニングって実際にはどうやるんですか?
高妻:「これをやれば絶対に入れる」ということはないですが、いくつか要因はありますね。例えば、やる気を高める目標設定や、自分の気持ちをコントロールするためのリラクゼーション、イメージトレーニング、集中力の高め方、プラス思考とか。あと独り言を言ったり。
松永:独り言を言うとゾーンに入れるんですか?
高妻:これはセルフトークというんですが、自分に自己暗示をかけるみたいな自信を持つやり方ですね。
幸坂:どんな言葉をかけるんですか?
高妻:「よし、いける」とかですね。昔ならジャイアンツの桑田選手がボールにぶつぶつ喋ってましたね。あれはセルフトークです。「俺の球を打てるものなら打ってみろ!」と。
松永:ゾーンに入る確率を高めているんですか?
高妻:そう考えていいと思います。一番いいのはルーティーンです。イチロー選手のバット回しとか。いろんな選手が当たり前でやっていますが、それをスイッチと考えていいと思います。
松永:それを選手に教えているんですか?
高妻:そうですね。簡単にいうと、世界のトップ選手が実際にやっていたことを研究で集めてプログラム化したものがメンタルトレーニングなので。
幸坂:不安要素があったりマイナス思考だとゾーンには入りにくいんですか?
高妻:そうですね。だから不安にならないように自信をもってスポーツを楽しんでいる状態がゾーンに入りやすい要因になります。
松永:ネガティブな人がゾーンに入るのは難しいんですね。
高妻:ネガティブってそれが習慣化されているので、その人をポジティブに習慣化していかないといけません。だからメンタルのトレーニングなんです。コツコツと積み上げて何年もかけて作っていくのがメンタルトレーニングなんです。パッとできることはほぼありえません。
松永:ポジティブになるにはどうすればいいんですか?
高妻:一番いいのはセルフトークですね。例えば「いただきます」とか「ごちそうさま」を元気よく言うんです。これは呼吸法なんですよ。呼吸を強く激しく言うんです。例えば「あちぃ…」と言うのと、「あちー!!」って言うのでは全然違いますよね。こうやって語尾を上げて独り言やコミュニケーションをするとかがありますね。
松永:これ、日常生活がネガティブに陥りやすい人も実践するとよさそうですね。
高妻:そうですね、ネガティブな人はいつも下を向いてため息をついてますから。まずは姿勢を変えるトレーニングです。胸を張って上を向く、ヘッズアップっていうんですけど。
松永:物理的なトレーニングで改善されるんですね。
高妻:そうですよ。自信がある人は胸張っていますから。だから自信があるフリをするトレーニングもあるんですよ。
幸坂:それで習慣化して身につくんですね。
松永:高妻さんが見てこられた人で、元々ネガティブだった人もいますか?
高妻:ネガティブは誰でも持ってますよ。それをポジティブへ習慣化していって、スポーツで使うと。ゾーンはまぐれでしか入らないんですよ。例えばスポーツ選手って必ず1年で10%は調子がいいんです。それをもう10%増やしたら2倍ゾーンに入れます。それを3倍、4倍としていくのがメンタルトレーニングです。一流選手というのは実力発揮が素晴らしいんですよね。
引き続き、ゾーンに入るためのメンタルトレーニングについてお話を伺いました。