山梨県立図書館が入館者数を大幅に増やした理由とは

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。6月15日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、山梨県立図書館のあゆみと「読書離れ」改善に向けた山梨県の取り組みについて解説しました。

松田:今日はJR甲府駅北口前に移転して今年で10年という県立図書館の歩みを前半で、後半は図書館と書店、県、学校など「産学官参画」で読書離れを改善しようという山梨県の取り組みについてお話しします。

麻耶:まず、県立図書館の沿革と利用状況の推移を教えていただけますか。

松田:県立図書館の前身の図書館は1900年(明治33)年開設です。太平洋戦争中は図書館業務を中断、戦後5年で再開し、1970年(昭和45年)に甲府駅の南エリアの甲府市丸の内へ移転、そして10年前の2012年11月に今の甲府駅北口に移転しました。年間の来館者数は年度途中で移転した2012年度の37万人が、移転後の初の通年来館となった2013年度は90万人を突破、7年連続で90万人を超えた後、新型コロナ感染が来て3分の1に激減しましたが、昨年度(2022年度)は53万人まで回復しました。図書の昨年度の年間の貸し出し点数は、コロナ禍前の水準を上回り36万点を超えました。

麻耶:移転で来館者が大幅に増加したのはなぜでしょうか。

松田:県立図書館の司書幹の飯沼さんによると、建物や設備が老朽化していた移転前に比べ、駅前移転という立地の優位さと新しさ。さらに、貸し出しだけでなく、県民の交流・賑わい創出機能をもたせたことが要因だったようです。ほかにも、さまざまな仕掛けがありました。初代館長で作家の阿刀田高さんが提唱した、親しい人に本を贈る「贈りたい本大賞」などの事業を中心とした、県の「やまなし読書活動促進事業」(やま読=やまどく)です。この賞はスペインに本を贈る「サン・ジョルディの日」という文化があり、その山梨県版です。贈りたい本を1冊選び、本への思いを150字で綴るというものです。「大きな図書館ができて書店がつぶれてはならない。両者が協力し合い読者を育てていきたい」という強い思いからだったそうです。

麻耶:ほかにどんな事業がありますか。

松田:発表者が面白いと思う本を5分で紹介し、「読みたい」と思った聴衆の投票で勝者を決める「ビブリオバトルやまなし」▽作家と図書館長とのトークショー▽図書館と書店めぐりでスタンプを集める「やま読ラリー」▽図書館司書が選ぶ「こんな時、この1冊」など盛りだくさんです。これらの事業は、県立・市立図書館、書店・出版社、県と大学や公立高校の「産学官」で構成する「やま読実行委員会」で企画・立案、展開されています。実行委員長で甲府の書店「朗月堂」社長の須藤さんによると、図書館と書店は通常、競合するのですが、やま読では、両者が協力し、さらに県、学校などが加わった全県的取り組みに発展していて、この種の活動は県外では聞いたことがないそうです。また、山梨県は人口当たりの市町村立図書館数が全国トップで、“読書県”の側面もあるのですが、良いことばかりではない。「読書離れ」を示唆する調査もあり、読書促進活動は模索が続いています。

麻耶:読書離れは山梨県だけでなく全国的な問題ですよね。どんな調査でしょうか。

松田:文部科学省の「全国学力・学習状況調査」によると、山梨県の公立小中学生で「平日、授業以外に読書をしない人の割合」(2021年度)は前年度比で小中ともに悪化し、小学校約20%、中学校30%。一方、内閣府の調査によると、小中高生の1日のインターネット利用時間は5年連続で増加、小学生が約3時間半、中学生が約5時間、高校生が5時間半と驚くべき数字でした。内閣府は「子どもの読書習慣に大きな影響を与えている可能性がある」警鐘を鳴らしています。これは随分、控えめな言い方ですが、1日5時間を超えると、これはもう“ネット依存”“ネット中毒”といってもいいのではないかと思います。

麻耶:読書離れは、私たち大人も含めて起きていると思われますが、松田さんはどう改善したらいいと思われますか。

松田:読書離れが、人にどんな影響を及ぼすかを科学的裏付けの基に認識することが非常に重要です。須藤社長が指摘され、私が調べた範囲でもそうでしたが、複数の脳科学者は、デジタルではなく、リアルの本や新聞・雑誌など印刷された活字に触れるほど、学校の成績が上がる▽発想力・企画提案力が高まる▽認知症予防になる――などの研究・実証をしています。両者では脳の働く部分が異なるからだそうで、紙の活字だと考える力がつくが、デジタルはそれほどではないとされ、これが読書推進の最大の効用です。最後に紙の活字との触れ方ですが、書店や図書館で本と出会うことと、ネット通販で本を買うことは大きく違います。書店も図書館もぶらぶら歩き、宝の山の本の中で、素敵な本との“偶然の出会い”があります。しかし、ネット通販は、最初からタイトル、著者名が決まっている“目的買い“で、ここが決定的に違います。須藤さんも強調していましたが、書店の楽しさは「何この本? 面白そう」という店頭での偶然の出会い。同じことは新聞でも言えます。ページをめくると、時に面白い記事、感動する記事を見つける。しかし、ネットニュースは、配信者が一方的に選んだニュースを目にするか、自らキーワード検索するだけで、偶然の出会いはありません。ということで、本日は“読書の勧め”でした。みなさん、書店、図書館へ行き読書を楽しみましょう。

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:鈴木ダイ(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
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補欠選挙の結果を分析。「保守王国」と呼ばれる島根に変化が?

4月29日「長野智子アップデート」(文化放送)、午後4時台「ニュースアップデート」のコーナーでは政治ジャーナリストの角谷浩一さんに、4月28日に行われた補欠選挙の結果を解説してもらった。この記事では島根1区に関する部分をピックアップする。

長野智子「選挙区ごとに分析などいただければと思います。まずは唯一の与野党対決となった島根1区です」

角谷浩一「亀井(亜紀子)さんは一度現職もやられていたので返り咲きということになりますが、島根が『保守王国』といわれますよね。1区はずっと細田(博之)前衆議院議長が地盤を守っていて」

長野「小選挙区制度の導入以降、ずーっと。勝ち続けた」

角谷「2区は、もう亡くなりましたけど竹下亘さんがずっと議席を持っていた。つまり保守王国というより、細田さんと竹下さんがずっとやっていたと。ある意味で当たり前だった。それがお二人ともご存命でなくなって、時代が変わってきて、新しい人が。それも自民党の人が引き継ぐものだと思っていたら、こんなことに、と。細田さんがお亡くなりになったための選挙ということで、自民党も候補者を立てました」

長野「はい」

角谷「ただ細田さんは(旧)統一教会との関係が取り沙汰されたり、じつはセクハラ問題というのがあったり。それに安倍派を細田さんはずっと守っていた、ということも。いま問題になっていることを全部抱えていた、みたいな問題があった。お亡くなりになったので自民党は候補者を立てたけど、そんなに簡単ではなかった、ということ」

長野「きちんと説明されないまま、亡くなられてしまったわけですね」

角谷「今回負けたけど、次はもう有権者は自民党に帰ってくる、という声も地元にはあるんだと思います。今回も県会議員がほとんど動かなかった、という話もありました。一方で世論調査、事前のいろんな調査ではかなり引き離されていて、亀井さんが強かった。でも(岸田文雄)総理は2度入ったんですね。最後の土曜にも入られると。総理が最後に入るのは、逆転できそうなとき、というのが不文律でした。数字の差が既にあるのに、総理は入った」

長野「はい」

角谷「これは岸田さんの独特なやり方というかな。突然、政倫審に出ると言う、派閥を解散すると言う……。岸田さんは誰かと相談して揉んで決めるというよりは、直感的に決められるんですね。島根1区は自民党が唯一出していたところだから、小渕(優子)選対委員長はずっと張り付いていました。国会開会中でしたけど、ずっと」

長野「はい」

角谷「岸田さんは2度も入った。茂木(敏充)幹事長は入らなかったんですね」

長野「それはなぜですか?」

鈴木純子(文化放送アナウンサー)「岸田さんとの仲が微妙だという話も……」

角谷「ただ選挙に勝てば微妙どころか、戦うところで『茂木さん、よくやった』となりますよ。一生懸命、入らなかったというのは、幹事長自らが諦めていたんじゃないだろうか、とか。もっと言うと第一声。泉健太立憲民主党代表は、初日に島根で第一声、声を上げているんですね。ところが茂木さんは行かなかったと」

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