米露関係が改善されない限り遠い北方領土問題

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。安倍総理がロシア幹部と会談したニュースについて解説した。

2008年4月の党大会にて拍手の中立ち上がるプーチン(統一ロシア – Wikipediaより)

安倍総理がロシアの与党幹部と会談

安倍総理大臣は5月16日、ロシアのプーチン政権与党「統一ロシア」のトゥルチャク総評議会書記と総理官邸で会談した。総理は日露平和条約交渉に関連して、「条約締結を目指して取り組んでいきたいと思うのでよろしく」と協力を呼びかけた。

飯田)プーチン大統領は6月にG20のタイミングで日本に来ると言われておりますが、これはその前の地ならしということになるのですか?

宮家)一般論として、日露の対話が続くことは悪いことでは無いです。しかし、この与党の幹部の人よりも、プーチン大統領のほうが圧倒的に重要です。プーチンさんを懐柔することは難しいと思うけれど、だからこそ、日本はいろいろな手を使っているのだと思います。最近、北方領土問題の交渉については若干停滞気味で動きが見えませんよね。水面下ではやっているのだと思いますが、いろいろな方向から仕掛けて行こうということだと思います。

飯田)一時はG20までに、何かしらの動きがあるのではないかと言われていましたが。

宮家)期待がある程度膨らんだ時期もあったかもしれませんが、客観的に見れば、いまロシアとアメリカとの関係が改善されていません。アメリカ国内はロシアゲートもあってなおさら進まない。アメリカと中国の関係も非常に悪化しています。ロシアからすれば中国は同盟国ではないのだけれども、戦術的には有難いパートナーです。ですからその意味で、ロシアが日本に譲歩するのはなかなか難しい時期に来ているのかなと思います。もう少し状況が変われば、ロシアの出方も変わって来ると思うのですが、客観的に見た場合、いまは少し難しいということなのだと思います。

ロ、在日米軍で回答要求  モスクワで記者会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)=2018年12月20日 写真提供:共同通信社

改善されない米露関係~プーチン大統領に言うべきことを言えないトランプ大統領

飯田)ポンペオさんがこの間ロシアのソチに行って、ラブロフさんと会談しただけではなくプーチンさんとも会談しました。ここで首脳会談についても前向きに話したということもあって、大阪で米露の首脳会談が行われるのではないかと言われています。この辺は少し局面が変わって来ますか?

宮家)今アメリカで良く言われているのは、トランプさんはプーチンさんにちょっと甘いのではないかということです。大体、大統領選挙にロシアが介入したことはアメリカの捜査当局も認定しているわけだから。本来であればアメリカの大統領が、「けしからん、俺たちの大統領選挙に手を突っ込むとは何事だ」と言うべきなのだけれど、なぜかトランプさんは言えないのですよ。そうなると、大統領は何をやっているのだということにもなって行って、なかなかアメリカとロシアの関係が好転する状況ではないのです。
そもそもその裏には何があるかと言うと、1つはロシアがクリミアを併合してしまって、その前にウクライナへの介入もあるわけですが、これで国際社会から経済制裁を食らっているのです。「クリミア問題を直さないで米露関係が良くなるわけがないではないか」と、普通ならトランプさんが言わなくてはいけないのですが、どうもプーチンさんに対して歯切れが悪いのですよね。言うべきことを言えないとなると、彼もなかなか国内政治的に難しい。でも本当はアメリカとロシアが、少なくともNATOの問題について突っ込んだ議論をするのがあるべき姿だと思います。

飯田)プーチンさんからしたら、もともと選挙に手を突っ込んだり無茶をやるのも、制裁を解いて欲しいからという点もあったのですよね。完全に裏目に出てしまいましたよね。

宮家)そうですね。しかし、ロシアの敵対国の大統領選など重要選挙への介入は昔からです。ソ連の時代からずっとやっているので、彼にとってはあまり変わらないと思いますよ。そもそもプーチンさんがそれをやっていたのだから。

飯田)もともとKGBの人ですからね。

宮家)そうですよ。まさに東ドイツでそうした工作をやっていたのだから。

飯田浩司のOK! Cozy up!
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米大統領選~トランプ大統領の再選は防げないか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ビル・デブラシオ ニューヨーク市長が大統領選に立候補を表明した報道について解説した。

ビル・デブラシオ – Wikipediaより

NYのビル・デブラシオ市長がアメリカ大統領選に立候補を表明

2020年のアメリカ大統領選挙に向けて、民主党の有力な政治家であるニューヨークのビル・デブラシオ市長が立候補を表明した。民主党の候補者指名争いに名乗りを上げたのはこれで23人となっている。デブラシオさんは現在58歳、ニューヨーク市長選挙のときに姿を見せた奥様はアフリカ系アメリカ人の黒人の女性。デブラシオさんはヒラリー・クリントンさんの上院議員1期目、2000年の選挙参謀やニューヨーク市長に継ぐナンバー2のポスト、市政監督官を経て2013年ニューヨーク市長に当選した。現在2期目で就学前の教育の拡充や最低賃金の引き上げなどに取り組み、トランプ政権の不法移民対策に強く反発している。

飯田)民主党の候補者指名争い、23人というのはすごいですね。

宮家)少し異常な状況ですよ。彼らからすれば、あの市長でも議員でも何でもなかったトランプさんだって大統領になれるのだから、私でもやれるという人が23人もいるわけだと。これは大問題でしょう。前も申し上げたことなのですけれど、アメリカの大統領選挙では、基本的に民主党は1つではないのですよ。民主党は50個あるのです。共和党も50個ある。それは各州に独立した政党があるから、下手したら名前も違います。

ジョー・バイデン(2013年)(ジョー・バイデン – Wikipediaより)

大統領選挙~絞られない民主党候補者

飯田)名前も違うのですか?

宮家)微妙に違います。だから1党が50州に支部を持つというよりも、一昔前は4年に1度、大統領選挙のために50の民主党と50の共和党が競い合って、50個がどうやって合体するか、それを競うのがアメリカの大統領選挙でした。いまでも私はそう思っています。しかし共和党はトランプさんという人がいて、トランプ流ソフトウェアだからプログラミングが狂っているところがあるのだけれども、一応は50の共和党が合体しているのです。そこで民主党側はどうかと言うと、後1年少しで選挙だから、そろそろ絞られて来ないといけないのだけれど、今でも23人も出ている訳ですからバラバラではないですか。本当に合体できるのかと。ニューヨーク市長は立派かもしれないけれど、そんなに簡単に大統領選挙で勝てるものではありません。全国に支持が、もしくは組織がなくてはいけないのです。しかし民主党は右から左までいるので。いちばん有力だと言われているのは前の副大統領のバイデンさんなのだけれど、バイデンさんもいいお年だし。

飯田)もうかなりご高齢だと言われていますよね。

宮家)サンダースさんはもっと上でしょう。この2人が争っているのだったら、とてもではないけれど合体などできませんよ。僕はいまの状況を見ていると、トランプさんはバイデンさんが出て来ることをわかっていて、必ず叩きに来ると思いますね。

飯田)もう既にツイッターでやっています。

トランプ米大統領の一般教書演説を聞き、立ち上がって拍手をするペンス副大統領(後列左)と、着席したままのペロシ下院議長(同右)=2019年2月5日、ワシントン(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領に2期目の可能性

宮家)彼がいちばん強敵だから。しかし私が心配しているのは、民主党がバラバラになってしまっていて、トランプさんの2期目の可能性が出てくることだと思います。こんなことをやっていていいのかという気はしますけれど、これがいまのアメリカの政治の実態です。

飯田)民主党のなかを制するには極端な、ヒラリー系の意見を言わなくてはいけないのですけれど。

宮家)特に予備選のときには、極端な、偏った意見を持った人たちが政治的には活動が活発ですから、候補者はある程度左に寄って行かないと票が出ない。逆に穏健な中道の人たちは静かにしているから、残念ながらなかなかバイデンさんのようなまともな人が出にくくなっているのは事実だと思います。これは昔からそうですけれど。

飯田)そうすると別のテーマとして、マイノリティであるとか、そういう方が強い。

宮家)それはそれで大切なテーマだとは思うのだけれども、大統領選挙を勝たなくてはいけないのはまた別の話ですよね。やはり真ん中をしっかり押さえられないと選挙に勝つのはなかなか難しいと思います。

飯田)23人をこれからどう絞って行くのか。

宮家)本当に絞られるか、心配ですよ。

飯田)絞られない可能性もある。

宮家)そうしたら分裂です。

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