アマプラ独占配信「アメリカン・フィクション」はアカデミー賞注目作品

クリエイティブプロデューサー・三好剛平氏

2/27からAmazon Prime Videoで配信が開始したばかりのアメリカ映画『アメリカン・フィクション』。アメリカでは昨年公開され、アカデミー賞の前哨戦として重要視されるカナダのトロント国際映画祭では最高賞にあたる観客賞を受賞、そして3/10に発表される第96回アカデミー賞でも作品賞ほか5部門にノミネートされている注目のコメディ・ドラマ作品だ。日本では劇場公開なしでAmazon Prime限定の独占配信が開始したばかりのこのタイミングで、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演するクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんが見どころを語った。
 

「アメリカン・フィクション」とは

本作はパーシヴァル・エヴェレットという作家による2001年の小説「Erasure(消去)」とを映画化した作品で、脚本・監督をコード・ジェファーソンが務めました。

 

コード・ジェファーソンはこれまで人気脚本家として業界では広く知られる存在で、Netflixの人気ドラマシリーズ「マスター・オブ・ゼロ」「グッド・プレイス」そして2019年に発表され歴史的傑作となったHBOドラマ「ウォッチメン」などで脚本を務めこれまで数多くの賞を受賞。今回が初監督作品となるわけですが、さっそくトロント映画祭での観客賞受賞をはじめ、その後も英国アカデミー賞や放送映画批評家協会賞の脚色賞など受賞を続けており、第96回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、作曲賞の5部門にノミネートということで注目を集めています。(オバマ大統領が毎年選出する “お気に入りの作品”の映画部門にも選ばれていました)。

 

主演は人気の黒人俳優ジェフリー・ライト。ダニエル・クレイグ版「007」でボンドをサポートするCIA局員フェリックス・ライター役で出演したり、その他さまざまな映画で主演や助演を務める実力派俳優です。今回は、売れない黒人の小説家を演じ、アカデミー賞では主演男優賞にノミネートされています。

売れる作品?

さてここからあらすじに入る前に、お二人と一緒に今回はある一つのお題を考えてみたいと思います。

 

映画や小説、アートなどで世界には色んな創作物、作品がありますが、そこに生まれる「売れる作品」と「売れない作品」の差は何なのでしょうか?そして「売れる作品」だからといってその作品は「良い作品」なのでしょうか?

 

これを踏まえて、この映画のあらすじをご紹介したいと思います。

 

主人公は、成功した小説家であり、大学で英文学の教授を務める黒人男性作家モンク。出版社に書き上げた新作を提出するも、“黒人らしさ”が足りない、と評され著書が発表できない日々が続いています。方や業界では、いかにも世間がイメージしそうなステレオタイプな”黒人らしさ”に迎合した黒人女性作家の小説がベストセラーとして注目を集めています。

 

それでもなんとか自分の創作物が社会に対して負う“黒人らしさ”への責任や、自分なりの創作への倫理観などから、自分ではそうした小説を書かずにやり過ごしていた主人公でしたが、ある日、母がアルツハイマーであることがわかり、高額な介護費が必要になります。

長らく出版が出来ていない悔しさも助けて、彼はついに、酒を煽りながら思い付く限り、いかにもな“黒人要素”を詰め込んだ小説を、ペンネームを使って書き上げます。本人としては、出版社への皮肉として送りつけたはずのこの小説でしたが、出版社からは「こんな完璧な本は久々に読んだわ」「あの強烈な文体は黒人としての辛さを経験した人にしか書けないものだ」と大絶賛を集め、たちまち破格の値段で買い手がついてしまいます。すぐにその年を代表するベストセラーになるばかりか、ハリウッド映画化まで決まってしまうなか、ついには自分が審査員を務める文学賞にまでその作品が食い込んできてしまい——、というようなお話です。

 

アメリカでは、人種や性差別、環境問題など様々な社会の不均衡に強い配慮を示す人々を「woke(wakeの過去形、awake=目の覚めた、悟ったに関連)」という言葉で表現することがありますが、近年、この「woke」への見方が変化してきているようです。それは日本でも「意識高い系」という言葉が皮肉としても使われていることにも通じますが、ともすれば行き過ぎた倫理意識は、問題の本質を捉え損ない、その解決から遠く離れた、ただいびつな価値観を新たに社会の「正解」や「規範」にすげかえてしまうような場面が増えているせいでもあります。

 

この映画でテーマになる人種問題についてもこうしたwokeの流れはかなり大きなものになっています。これまで白人作家や作品だけが評価されてきた文学界において、新たな人々——この映画では黒人の「生の声を伝えている」作家や作品も評価すべし、ということでその規範意識が暗黙のルールとなって、そこから出版されるべき新しい本、新しい作家が文字通り「生み出されて」いくわけです。

 

しかしそこで「“黒人らしさ”を十全に表現できている」と評価するのは誰かといえば、それは引き続き多くが「白人インテリ層」のままであるという事実であり、またまだ価値観がアップデートされていないままの「大衆」であるということが問題になります。つまりここでいう「黒人らしさ」とは、「白人そして多くの大衆がイメージできる・期待する(=そうであってほしい)黒人像」に過ぎないのではないか、ということが映画のなかでも見つめられていきます。

 

映画ではこの問題を黒人についてのコメディとして提起していますが、当然これは黒人問題に限ったことではありません。当初は、これまで社会のなかで埋もれていた声に新しい力を与え届く声にしていくという意味で正しい取り組みだったはずのものが、一体どこから歪んで、そうしたマイノリティの人々のステレオタイプをただ広めるような仕組みに成り下がってしまうのか。作品を「売れる」「広く知られている」「影響力がある」という評価軸でしか測れない社会において、いかにして創作はなお可能なのか。

そしてこれは僕がいまこうしてラジオに出演してお話させてもらっていること、つまり「見方」や「読み方」を教わらないと十分楽しめない作品はそれでも存在する意味があるのか?というようなことにも関わってくる、非常に射程の広い問題でもあると思いました。個人的にも、この映画を課題作品にして皆さんとぜひ色んな話を交わしてみたくなる映画でした。

 

と、ここまでご紹介してきましたが、映画としてはコメディとして抜群に面白い作品でもあり、ウィットに富んだクライマックスも含め、いま見るべき注目の作品だと思います。

 

「アメリカン・フィクション」はAmazon Prime Videoで配信中です。

ぜひご覧になってみてください。

「アメリカン・フィクション」

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、三好剛平
番組ホームページ
公式Twitter

出演番組をラジコで聴く

※放送情報は変更となる場合があります。

【西武】源田壮亮選手インタビュー 1番打者でも初球から打とうと思わせた栗山巧選手の言葉とは?

4月19日放送のライオンズナイターでは、ベルーナドームの西武―楽天4回戦の試合前に、埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手にインタビューした模様を放送した。努力が結果に結びつかない日々の心境について訊いた。

――先週の金曜日、ソフトバンク戦(4月12日、1回戦)は1番打者を今シーズン初めて2試合連続で務めました。1打席目の初球を積極的に打ちにいった姿は、源田選手の決意の表れに見えました。
源田「試合前にいろんな選手と話をしているなか、栗山(巧)さんの一言で『初球から打ってみようかな』と思えて打ちにいきました」

――栗山選手の一言とはどういった言葉だったのでしょうか?
源田「栗山さんも1番や2番をずっと打ってきて、『1番打者は難しいけど何もない状態からスタートできることを強みと思って、凡退してもあまり気にしなくてもいいんじゃないか。考えすぎてもいいことはないよね』という話をして、初球から思い切って打ってみようと思ったんですけど結果は最悪の凡退でした」

――源田選手の方から栗山選手に声をかけたのでしょうか?
源田「(西川)愛也と話している時に栗山さんから話しかけてくれました」

――先週の金曜日(4月12日)ライオンズナイターのインタビューで、源田選手は「何も考えずにどんどん振っていく1番打者がいても面白い」とおっしゃっていましたね。
源田「僕はどんどん振っていくタイプじゃないので難しいですね」

――それはほかの人に任せておいてということでしょうか?
源田「はい。本当に考えていない人がいたらいいなと思います(笑)」

――今日の西武先発は今井達也投手です。今シーズンの投球を見ていて感じることはありますか?
源田「すごく気持ちを前面に出して投げているなと思いますし、『俺がやるんだ』という気持ちが伝わってくるので本当に頼もしいなと思っています」

――守りがいがありますね。
源田「そうですね。周りを見て声をかけながら投げているので、年々すごくいい変化が見えてきて嬉しいです」

――努力が結果に結びつかない日々ですが、源田選手はどのような心境で戦っていますか?
源田「シーズン中のどこかで結果が出ない時はどのチームも絶対にありますし、それが今きているのかなと思います。それでも借金4(4月18日時点)なので、まだまだこれからだと思います」

※インタビュアー:文化放送・斉藤一美アナウンサー

Facebook

ページトップへ