わずか40分!?ドキュメンタリー映画「ラスト・リペア・ショップ」

クリエイティブプロデューサー・三好剛平氏

「ラスト・リペア・ショップ」というドキュメンタリー映画。これはは来たる3/11AMに発表される第96回アカデミー賞で短編ドキュメンタリー部門にノミネートされており、現在Disney+で配信中のわずか40分間の作品。見終わった後にはもうあまりの素晴らしさに涙で顔がぐしゃぐしゃになるほどの作品だったと、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演したクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんが語った。

LAUSD(=ロサンゼルス統一学区)による芸術教育

さてこの映画のタイトルは「ラスト・リペア・ショップ」ですが、そのまま訳すると「最後の修理工場」となるでしょうか。映画はロサンゼルスにある楽器の修理工場で働く4名の修理工のエピソードを追うドキュメンタリーです。が、ここは単なる修理工場ではありません。その学区のなかにあるさまざまな学校で、子どもたちが使っている楽器を修理する工場であることがポイントとなってきます。

 

ここから映画の本筋の紹介に入る前に、まずこのロサンゼルスのある学区とその芸術教育について、ご紹介したいと思います。Los Angeles Unified School Districtの頭文字をとってLAUSD=ロサンゼルス統一学区と呼ばれているその学区では、学区内の学校の「全学年の全生徒が利用できる、総合的な芸術教育プログラムを開発・推進」するArts Education Branch=芸術教育部門が設けられています。

 

彼らのホームページを見てみると、この部門のビジョンは「LAUSDの生徒は、あらゆる文化的、社会経済的レベルにかかわらず、コアカリキュラムの一部としてダンス、音楽、演劇、視覚芸術、メディア芸術の質の高い芸術教育を学ぶことができる」とされています。

 

この「あらゆる文化的、社会経済的レベルにかかわらず」ということが重要です。映画のなかでもこのプログラムによって楽器を手にできた児童たちのインタビューが登場しますが、彼ら一人ひとりが語るエピソードの向こう側には、貧困や複雑な家庭環境などさまざまな事情が見え隠れします。そんな環境のなかで、楽器を無料で使えて、不調なときには修理にも出すことができ、心置きなく楽しめることが、児童たちの将来にどのような可能性を育むことになるのか。

 

この楽器修理工場の事業は1959年に始まったとされていますが、現在では8万個の楽器の修理とメンテナンスを無料で続けています。こうした工場が残っているのはアメリカのなかでもここが最後の学区ということらしく、そのあたりからもLAUSDはこの活動に、かなり強い信念を持って取り組んでいることがわかってきます。そしてその信念の先にあるものとは何か、ということについては、この映画をご覧になっていただければよくご理解いただけるはずです。

壊れてしまったものを直すこと

さて、ここから映画の中身にももう少しだけ触れていきたいと思います。ここまでお話ししたような、複雑な事情を抱えた児童たちの楽器を修理してくれるのが、今回のドキュメンタリーに登場する修理工場の人々です。映画には、弦楽器の修理工のダナにはじまり、金管楽器のパティ、木管楽器のデュエイン、ピアノのスティーヴという4名の修理工が登場します。

 

映画ではここから彼ら4人がなぜ修理工の仕事をしているか、というバックストーリーが一人ずつ紹介されていきますが、とにかくそのエピソードがどれも本当に心を打つものばかりです。なかには「劇映画の脚本だってそんなストーリーは準備出来ない!」というようなものもあって、まずはそこに耳を傾けるだけでも映画は十分楽しめるのですが、この映画の素晴らしい点は、その四人のエピソードがやはりひとつのメッセージに貫かれているところなんですね。

 

劇中で紹介される4名はそれぞれ、まだ社会の理解が浸透していなかった時代に自身の同性愛に悩み苦しんだダナ。メキシコから夢を抱いて渡米するも貧困に苦しんだ経験を持つシングルマザーのパティ。幼少時に蚤の市で出会った壊れかけのバイオリンを必死で手に入れ、そこから信じられないような人生を経験したデュエイン。そして旧ソ連アルメニアで起きた戦争によって祖国を追われ命からがらアメリカに渡ってきたスティーヴです。

 

彼らの人生のなかにはいずれも「一度は壊れてしまったもの」あるいは「世界からもう役立たずだと見捨てられたもの」と関係を結び直した経験があります。それはときに安売りされた楽器であり、または社会から見放された彼ら自身の人生でもある。しかし彼らはそうした「壊れてしまったもの」もじっくり時間をかけて向き合い、手をかけてやれば今の自分のように立て直せることを知っている。だからこそ、彼らが壊れた楽器を丁寧な手つきで修復していくイメージはそのまま、楽器の向こう側にいる一人ひとりの子供たちへのケアや寄り添いの振る舞いのようにも映ります。そして、楽器や音楽を通じて世界はもう一度輝くものに出来るよ、という祈りのようでもある。

 

LAUSDのホームページのAbout Usに記載されたステートメントには、芸術に触れることができた人がその後社会のなかでどのような市民となって新しい社会をつくることができるか、という趣旨のテキストが記載されていますが、そのテキストの最後は「芸術を通して語られる物語は、未来の世代へと継承される」という文言で締められています。

 

一度は壊れてしまったものでも、手をかけてあげればきっと直すことはできる。そのことを実感できる経験を持つ人は、その次の世代にまた同じものを与えることが出来る。そして、そういう人間が一人でも多くいる社会には、きっと希望があります。

 

いま、世界のあちこちで、もう修復しようがないほど壊れてしまって見えるものが山ほどある。そのなかで、この映画の、とてもささやかではあるが確かな「リペア(修復)」の可能性を見たとき、僕はもう涙が止まらず、どうか僕らの世界もこのような世界であり続けてほしい、と願うほかありませんでした。

 

個人的にも、ある小さなコミュニティや社会のなかで芸術や文化にまつわる仕事をやっている人間なもので、今回の映画はものすごく大切なものと出会えて嬉しくなるような作品でした。この映画は、アカデミー賞を取ろうと取るまいと、僕は皆さんに心の底からおすすめしたい一本です。

 

「ラスト・リペア・ショップ」はDisney+にて配信中です。

ぜひご覧ください。

 

「ラスト・リペア・ショップ」

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、三好剛平
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※放送情報は変更となる場合があります。

【西武】源田壮亮選手インタビュー 1番打者でも初球から打とうと思わせた栗山巧選手の言葉とは?

4月19日放送のライオンズナイターでは、ベルーナドームの西武―楽天4回戦の試合前に、埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手にインタビューした模様を放送した。努力が結果に結びつかない日々の心境について訊いた。

――先週の金曜日、ソフトバンク戦(4月12日、1回戦)は1番打者を今シーズン初めて2試合連続で務めました。1打席目の初球を積極的に打ちにいった姿は、源田選手の決意の表れに見えました。
源田「試合前にいろんな選手と話をしているなか、栗山(巧)さんの一言で『初球から打ってみようかな』と思えて打ちにいきました」

――栗山選手の一言とはどういった言葉だったのでしょうか?
源田「栗山さんも1番や2番をずっと打ってきて、『1番打者は難しいけど何もない状態からスタートできることを強みと思って、凡退してもあまり気にしなくてもいいんじゃないか。考えすぎてもいいことはないよね』という話をして、初球から思い切って打ってみようと思ったんですけど結果は最悪の凡退でした」

――源田選手の方から栗山選手に声をかけたのでしょうか?
源田「(西川)愛也と話している時に栗山さんから話しかけてくれました」

――先週の金曜日(4月12日)ライオンズナイターのインタビューで、源田選手は「何も考えずにどんどん振っていく1番打者がいても面白い」とおっしゃっていましたね。
源田「僕はどんどん振っていくタイプじゃないので難しいですね」

――それはほかの人に任せておいてということでしょうか?
源田「はい。本当に考えていない人がいたらいいなと思います(笑)」

――今日の西武先発は今井達也投手です。今シーズンの投球を見ていて感じることはありますか?
源田「すごく気持ちを前面に出して投げているなと思いますし、『俺がやるんだ』という気持ちが伝わってくるので本当に頼もしいなと思っています」

――守りがいがありますね。
源田「そうですね。周りを見て声をかけながら投げているので、年々すごくいい変化が見えてきて嬉しいです」

――努力が結果に結びつかない日々ですが、源田選手はどのような心境で戦っていますか?
源田「シーズン中のどこかで結果が出ない時はどのチームも絶対にありますし、それが今きているのかなと思います。それでも借金4(4月18日時点)なので、まだまだこれからだと思います」

※インタビュアー:文化放送・斉藤一美アナウンサー

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