松尾潔「We Are the World」「アーティストになった活動家」ハリー・ベラフォンテを悼む

音楽プロデューサー・松尾潔

大ヒット曲「バナナ・ボート」でも知られるアメリカの歌手、ハリー・べラフォンテさんが4月25日、96歳で亡くなった。公民権運動の先導者、そしてチャリティーソング「We Are the World」を提唱。「アーティストになった活動家」の足跡を、音楽プロデューサー・松尾潔が、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で紹介した。

野茂英雄のテーマソングとしておなじみの「バナナ・ボート」

ハリー・ベラフォンテさんの訃報が届きました。「バナナ・ボート」でなじみのある方も多いでしょう。リズムが面白いのか今でもずっと聴いていたいぐらいキャッチーだし、なんだか旅に出たいな、という気持ちに誘ってくれるような曲です。

 

ハリー・ベラフォンテさんはシンガーであり、俳優であり、そして本国アメリカでは社会活動家としてもよく知られています。まさに生ける伝説のような方が4月25日にニューヨークで亡くなりました。96歳ですから、大往生と言っていいでしょう。

「バナナ・ボート」は野茂英雄さんがメジャーリーグのドジャースにいたときに、「Day-o」という歌詞が「ヒデオ」に聞こえる、という空耳から始まって、「野茂英雄のテーマ」としてリバイバルが起こりました。カバーバージョンもいくつか出ましたが、もともとは1956年のヒットでした。当時ハリー・ベラフォンテさんは、20代の終わりぐらいですかね。

「バナナ・ボート」が世界的ヒット

べラフォンテさんは、俳優としても知られ、端正な顔をしてましたね。おそらく世界中の誰が見てもハンサムて言ってしまうような。今の時代にルッキズムの話ばかりするのはやや憚られますが、50年代当時、彼が人種を超えたスターに押し上げられたのには、この顔立ちが影響していたでしょう。

 

彼は人種的には黒人なんですが、父親はフランス領だったマルティニークというカリブの島の出身で、母親もジャマイカ系。つまりカリビアンアメリカンなんですね。アメリカの人たちから見ても「異国情緒のある黒人芸能人」という感じだったと聞いています。

 

アフリカンアメリカンのブルースやゴスペル、R&Bといったものとはちょっと違う、カリビアン発祥のカリプソという、リズムの面白さで知られる歌を歌いこなして、世界的にヒットしました。

 

「バナナ・ボート」は、ジャマイカの肉体労働に従事している人たちが、船にバナナを積み込むときに口ずさんでいた歌を、ポップに仕立て上げたもの。日本では浜村美智子さんがカバーしたものが有名ですが、いくつもカバーバージョンが出ています。つまり世界的大ヒットになったということです。

「We Are The World」を提唱

ハリー・べラフォンテさんの何が素晴らしいかというと、曲のヒットで得た名声の「使い方」に対して大変自覚的というところです。1963年の公民権運動「バーミングハム運動」で投獄されていた、キング牧師の釈放金を支払ったひとりが、このハリー・ベラフォンテだったと言われています。

 

教科書に出てくるキング牧師に資金的に手を差し伸べていたような人物が、つい先日まで生きていたということですね。つまり、アメリカの人種差別は、そんなに昔のことではないし、もっと言うと、今も根強く残っているということです。

 

ベラフォンテさんは「アメリカ国内における差別の芽を摘み取る」ということだけではなく、世界中にそれを広げなければという気持ちがあり、継続的に社会活動・社会運動に関わりました。そして、1980年代に「We Are The World」を提唱するんですね。

「アーティストになった活動家」であって「活動もするようになったアーティスト」ではない

最も認知されている社会活動家のアーティストといえば、マイケル・ジャクソンかもしれません。社会的に成功した人が、幸福のバトンを渡していくという「ペイ・フォワードの精神」というものが、アメリカのショービジネスにあります。その源流のところに、ハリー・ベラフォンテさんがいると考えてもいいでしょう。

 

1950年代、人種差別が激しかった時代に、黒人のハリー・べラフォンテさんが人種を超えたトップスターになったというのは、本当に歴史的なことなんですね。その彼が、社会活動家でもあったことが「We Are The World」につながっていきました。

「We Are The World」は「ハリー・ベラフォンテが言うんだったら」ということでいろんな人が動いたんだ、という背景を、我々は今一度認識するべきだと思います。

 

彼自身は「そもそも自分は、アーティストになった活動家であって、活動もするようになったアーティストではない」と言っています。つまり、彼の人生の中で最初に来るのは、音楽ではなく社会と関わること。音楽や演技、演劇は彼にとっては、自分の考えをまとめたり、いろんな人たちに影響を与えたりするためのプラットフォームだったのです。

 

「いろんな表現活動は、社会をより良くするためのもの」という信念がずっとあったんです。公民権運動は、彼を生涯ずっと活動家、そして闘士でいさせ続けたといえます。近年のBlack Lives Matter(黒人の命も大事)の精神の源流に、ハリー・ベラフォンテがいたということを認識していただければと思います。

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、松尾潔
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※放送情報は変更となる場合があります。

3児の父・田中裕二の“子育て事情”「奥さんのほうに相当比重がかかっちゃっています」

TOKYO FMで月曜から木曜の深夜1時に放送の“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。今回のお客様は、歌手・女優 菊池桃子さんと爆笑問題・田中裕二さん。ここでは“休みの日の過ごし方”について語り合いました。

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(左から)田中裕二さん、菊池桃子さん


◆田中「オフの日も休みがない」

田中:普段のお休みとかは、どういうふうに時間を使っていますか?

菊池:ちょっとシリアスな話になるかもしれませんが、親が結構高齢だったりするし、飼っている犬も15歳9ヵ月とすごいおばあちゃんで。

田中:なかなか高齢ですね。

菊池:そうなんですよ。なので、日常としてそういう場面と向き合ったり、あとは昔の映画とか、お仕事の栄養になるようなものを観たり聴いたりしていますね。田中さんは何をされていますか?

田中:休みは……ないですね。お仕事だけじゃなくて、家の仕事とか。だいたい子ども関連のことで。

菊池:そうですよね~!

田中:ちょっと前まで夏休みだったじゃないですか。そうすると「自由研究は何をするか?」「絵日記に何を書く?」っていうことを一緒に考えたり、習いごとに連れて行ったり、そういうのでだいたい時間が過ぎていっちゃいます。だから、本当にお母さんは大変だなって思います。

菊池:奥さま(山口もえさん)との割合でいうと、どのくらいですか?

田中:当然、奥さんのほうに相当比重がかかっちゃっていますね。朝から(子ども)3人分のお弁当を作ったりしていますから。

菊池:お料理は全般的に奥さまですか?

田中:そうなんですよ。料理は僕が全然できなくて、そっちは貢献できないので、それ以外の家事で何とか……とは思っているんですけど。

菊池:とはいえ、楽しいパパなんだろうなぁ~(笑)。

田中:いやぁ~全然ですよ、家だと超つまらないと思います(苦笑)。笑わせることも何もできないし……うちの奥さんも、家のなかでは多分そう思っていると思います。

菊池:じゃあ、家では私のほうが面白いかも(笑)?

田中:そうだと思いますよ(笑)。


▶▶菊池桃子“40周年記念ベストアルバム”に感動 続きは「AuDee(オーディー)」で!

<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00

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