“オール九州”で作った内山田洋とクール・ファイブ「東京砂漠」

音楽プロデューサー・松尾潔氏

「長崎は今日も雨だった」でデビューし、昭和ムード歌謡のトップを走り続けた内山田洋とクール・ファイブ。その代表曲「東京砂漠」の誕生秘話をRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した音楽プロデューサー・松尾潔さんが明かした。

メンバー全員が九州出身のグループ

内山田洋とクール・ファイブは昭和のムード歌謡史の頂点の一つかと思います。特にリードシンガーの前川清さんは、今でも大人気。九州が生んだスーパースターの一人です。僕は子供の頃「歌っているのが内山田洋じゃないんだ!」って気づいたときのショックは大きかった。それから「一番偉い人の名前なんだ」って認識に改めたんですが、実際に内山田さんを中心に作られたのがクール・ファイブで、そのリーダーの内山田洋さんは、1936(昭和11)年6月6日生まれで、ご存命であれば86歳だったんですが、2006年に70歳でこの世を去りました。

内山田さんは、福岡県柳川市の出身で、伝習館高校という伝統校を卒業しました。ギターが大変お上手な方で、私もコンサートで何度か見たことがあるんです。本当にジャズの素養の高くて、ギターソロはかっこいい。テレビでちょっと1曲だけやる、というのとは違う、奥行きを感じさせるようなミュージシャンでしたね。しかもリーダーシップが強かったという話も聞いています。

クール・ファイブはメンバー全員が九州の出身で、もともと長崎のキャバレーで営業していたグループなんですね。前川清さんは佐世保で歌っていたんですが、クール・ファイブのメンバーの小林さんがスカウトして、リードボーカルに収まることで、1969(昭和44)年に「長崎は今日も雨だった」でメジャーデビュー、いきなりヒットして、その年のレコード大賞新人賞を取り、『紅白歌合戦』にも出ました。その人気は前川清さん集中していくんですが、グループ内では内山田さんがプロデューサー的な役割も強くこなしていました。

桑田佳祐もお気に入り一曲「東京砂漠」

今回紹介したいのは「東京砂漠」です。これは内山田洋さん自らの作曲。建設会社のCMソングとして1980~90年代によく流れていましたが、ヒットしたのは1976(昭和51)年のことでした。

この曲を好きな人の中に、桑田佳祐さんがいます。桑田さんが「ひとり紅白」という企画をやったことがありますが、あのときクール・ファイブのメンバー全員の役を1人でして「東京砂漠」を演奏した動画がいまも残っています。「東京砂漠」は本当によくできている曲で、特に九州の方には沁みるんじゃないかなと思います。というのも、作詞を手がけたのは、北九州市若松区出身の吉田旺さんなんです。ちあきなおみさんの「喝采」の詞を書いた方です。

吉田旺の個人的体験が生んだ「東京砂漠」

吉田さんは元々画家を目指して、東京の多摩美術大学に進学したものの、その夢は叶わずに、広告代理店でデザインの仕事をしていたそうです。本人の弁によると「東京に出てきたけれど、画家になる道は遠い」と挫折を味わっていたころ、新宿の歌舞伎町で夜、タクシーを待っていたら、北九州で親しくしていた、昔の恋人というか、マドンナといった存在の人と、ばったり顔を合わせたんですって。ところが、かつての自分の理想の女性が、まるで昔の輝きを失っていて、吉田さんと目が合うとササッと、身を隠したそうです。そこで吉田さんはどう思ったかというと「東京ってつらいな」って。

「東京で夢を叶えることはつらいな」というのと同時に「東京は人を変えてしまうのかな」と考えていると、なんだか心が乾いた感じになって、それを「東京砂漠」という言葉に込めたということなんです。ちなみに「東京砂漠」という言葉は、吉田さんが作った言葉ではなく、東京オリンピックがあった1964年に、オリンピック開催が危ぶまれるぐらい、東京にずっと雨が降らず、その時に「東京砂漠という言葉ができたそうです。それから12年ぐらい経って、吉田旺さんの頭の中に、「これぞ東京砂漠じゃないか」と。

それを「長崎は今日も雨だった」という“雨男集団”のイメージが強いクール・ファイブに当てるというね。これは僕に言わせると「プロの作詞家が仕掛けた大回収劇」でもあるし「その歌詞に見合う粘りっこいサビを作った内山田洋あっぱれ」という、奇跡的なトライアングル。もちろんトライアングルの残りの一辺は前川清さんのボーカル、クール・ファイブのハーモニーですね。

ラジコプレミアムに登録して
全国のラジオを時間制限なし
で聴く!

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
番組ホームページ
公式X
公式Instagram

出演番組をラジコで聴く

※放送情報は変更となる場合があります。

トランプ大統領の施政方針演説は「まるでカルト集団」 明確な抗議をしない民主党への失望と怒りも!?

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

3月12日(水)のテーマは「アメリカZ世代の怒りのほこ先が『身内』民主党に向けられた理由」。トランプ大統領の施政方針演説を聞いたラボのメンバーが、それぞれ感じたことについて語り合いました。


※写真はイメージです



◆支持者・不支持者で反応が真っ二つ トランプ大統領の施政方針演説

3月4日におこなわれたトランプ大統領の施政方針演説。1時間半を超える異例の長さとなった演説を通し、彼は「アメリカは復活した」と自らの実績を強調し続けました。

トランプ大統領の施政方針演説が異例だったのは、その長さだけではありません。中継を見た人の過半数は共和党支持(=トランプを支持する人)で、逆にトランプを支持しない民主党支持者で演説を見た人は、わずか20%にとどまりました。内容的にも、国民全てに語りかけるはずの施政方針演説が、支持者に向けた選挙演説のようになっていたと批判する声もあります。

では、支持者とそうではない人の反応はどれほど違ったのでしょうか? トランプ不支持のラボのZ世代は、こう感想を述べました。

メアリー:演説はめちゃくちゃ退屈だった。だってもう最初から自分の手柄自慢みたいな話ばかりだったからね。そして今回も、虚偽の内容がたくさん含まれていた。驚いたのは、アメリカが人道援助していた「レソト」というアフリカの小さな国について、トランプが「そんな誰も聞いたこともない国に」と言い切ったことだよ。

でもそんなわけはないんだ。だって、イーロン・マスクがその国の大統領だか重要人物みたいな人と会っている写真が報道されているからね。イーロンはレソトに自分のインターネットのビジネスを持ち込もうとしているらしいんだ。彼がそれを知らなかったなら、それはそれで驚きだし、そもそもアメリカ大統領が「聞いたことのない国なんてどうでもいい」みたいな発言をするなんてありえないよ。

ミクア:トランプの演説のことを友達と話していたんだけど、彼女は「共和党はまるでカルト集団みたいだった」と言っていたよ。トランプが何か言うと共和党議員は全員立ち上がって、「USA! USA!」というコールが湧き起こる。すごく気持ち悪かったって。

トランプ不支持のメンバーからすれば「演説内容は虚偽ばかり」という反応でしたが、共和党支持者からすれば総立ちで叫びたくなるようだったという、見る人によってまるで反応が分かれた今回の演説。ここでフランス留学中のメンバーのノエに、ヨーロッパ人からの反応はどうだったかを聞いてみました。

ノエ:ヨーロッパ人は「トランプは愚かだ」と言う人と、すごく恐ろしいと感じている人の両方だと思う。共通しているのは、こんなことが実際に起きているなんて信じがたいという声。特にドイツ人は、家族の中に第二次世界大戦を生き抜いた者がいるからね。

彼らは、今のアメリカが、かつてのナチス・ドイツの歩みを忠実に再現していると言っているよ。そして、「アメリカ人があのようなリーダーを選ぶなんて信じられない」と言う意見がすごく多いんだ。

アメリカは、かつてのナチス・ドイツと同じ道を進もうとしている。そんな懸念を抱くヨーロッパの人も少なくはない様子です。アメリカでも反トランプ派のなかには、アメリカが独裁への道を歩んでいると言う危機感を持つ者が少なくありません。


(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab



◆明確な抗議をしない民主党への怒り

共和党がカルトのようになってしまったのなら、頼みの綱は野党である民主党だけ。しかし今回の演説では、民主党支持者の怒りはトランプではなく、むしろ民主党議員たちに向けられました。一体なぜでしょうか。

メアリー:トランプの演説中、客席にいる民主党が抗議のプラカードを掲げていたのを見た? 実はヒトラーの時代にも、議員たちのなかには抗議の象徴として紫色の帽子をかぶっている人たちがいたらしいんだ。

私たちの議員も今、プラカードを出すだけで他に何もせず、結局トランプのやりたい放題にさせている。だから民主党を見ているととてもイライラする。

アル・グリーン議員だけは、抗議のために立ち上がって声を上げたよね。他の人がただ座っているなかで、実際に何かをしようとしたんだ。でもひどいのは、自分の身内が立ち上がって抗議したのに、その翌日、彼に対する問責決議がおこなわれると、民主党議員の一部も一緒になって彼の投票権を剥奪する決定に投票したんだよ。

民主党はいつも「良識ある政党だから礼儀正しさが大事だ」とか「この伝統を守る」とか言っているけれど、そういうバカみたいな考え方には、もうイライラが止まらないよ。彼らは、「何かをするための適切なタイミングを待っている」と言うけど、民主党も結局、共和党と同じじゃないかと思ってしまう。どちらも大企業の言うことには逆らえないということだよ。

トランプの演説中、 民主党議員は1人を除いては、静かな抗議、つまり「その発言は嘘だ」「イーロン・マスクは泥棒だ」などと書かれたプラカードを掲げてメッセージを出そうとしていました。しかしこの様子は日本のテレビでは全く放送されなかっただけでなく、アメリカでの中継でも映ったのはほんのわずかの間でした。

良識を大事にするあまり、誰も見ない抗議をしてどうするのか? かつてのドイツ人がヒトラーの好きにさせてしまったように、結局アメリカでも民主党は何もしていないのではないか? ラボのZ世代含め、反トランプのアメリカ人の怒りの矛先が向けられたのは、今回はトランプ氏ではなく、身内である民主党議員たちでした。

これまでアメリカZ世代は、「自分たちがアメリカを変える」という、社会正義意識がとても強い世代でした。しかしこの民主党への深い失望が、「何をやってもどうせ変わらない」という気持ちにつながっていく不安を感じます。シェリーは「人々が少しずつ声を失っていく、そんな不安も感じてしまいます」と、心中を吐露して話題を締めくくりました。

----------------------------------------------------
3月12日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年3月20日(木・祝) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/

Facebook

ページトップへ