福岡の締めは「博多手一本」だけじゃない!?周縁から見える文化の豊かさ
筥崎宮（福岡市東区箱崎）の秋の大祭「放生会（ほうじょうや）」が9月12日～18日に開催された。RKB毎日放送の神戸金史解説委員長は群馬県の出身だが、福岡では箱崎に住んで長い。祭りの鉦（かね）の音や、地域独特の「箱崎一本締め」などの地域の風俗に心惹かれる気持ちを、19日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で伝えた。
筥崎宮秋の大祭「放生会」
RKB神戸金史解説委員長（以下、神戸）：筥崎宮の放生会が終わりました。
田畑竜介アナウンサー（以下、田畑）：昨日行ってきました！
神戸：筥崎宮の放生会といえば、露店が有名ですね。
田畑：500の露店が、ずらっと参道沿いに並んで。
神戸：にぎやかな秋のお祭りです。私は箱崎に住んでいるので、地域のお祭りなどにもなるべく参加しようとしています。今年は2年に一度の「御神幸」が行われました。武田さんは知っていますか？
武田伊央アナウンサー（以下、武田）：恥ずかしながら、知りませんでした。
神戸：放生会というと露店という印象ですが、神社の神事が先にあって、そこに人が集まって、露店が出てきたという順番です。2年に一度、筥崎宮の神様に神輿に移っていただき、氏子の住んでいる町々を巡行していく「御神幸」が行われます。9月12日に「お下り」があります。宮司さんたちは馬に乗り、約500人が鉦（かね）と太鼓を鳴らしながら4時間ぐらい歩いて、最後に参道の一番海側にある仮の宮「頓宮」にお神輿を収めます。14日に「お上り」があって、神様はお宮に帰ります。
御神幸で鳴らされた鉦と太鼓
神戸：「御神幸」が交通規制で止まったり、大事な人の家の前に止まったりした時、鉦と太鼓を鳴らしていきます。この音がとてもよくて、地域のお年寄りたちには聞いて涙する人もいました。
田畑：新型コロナで、「御神幸」は4年ぶりでしたね。
神戸：そうなんです。この音がお祭りの音、箱崎の音です。地域によっていろんな祭りがある。こういう文化はとても素敵だと思っています。「古い」と言う人もいますが、地域の文化を守るのは大切だと私は思っています。
箱崎地区独特の「締め」
神戸：博多生まれの武田さんは、博多祇園山笠にずっと関わってきていますね。
武田：はい。
神戸：締める時の「博多手一本」はどんなリズムですか？
【博多手一本】
「よーお」（パン・パン）
「もひとつ」（パン・パン）
「祝（いお）うて三度」（パパン・パン）
神戸：福岡市内の人は大抵知っていますよね。でも実はこれ、「博多部」だけの締め方ですね。箱崎という町は、今は合併して福岡市ですが、元々は粕屋郡箱崎町。粕屋郡で一番大きな町が箱崎でした。今でも福岡県庁の「粕屋総合庁舎」は箱崎にありますし、昔から粕屋の文化を強く持っているのです。そこでの「一本締め」は、「博多手一本」とは違います。
【箱崎一本締め】
「よー、せーの」（パン・パン・パン）
「もひとつせーの」（パン・パン・パン）
「よー、せーの」（パン・パン・パン）
「おー！」
武田：へー、初めて聞きました！
神戸：この締め方に対する箱崎の人たちの誇り、とても好きです。山笠に関わっている人は数が多いですから、箱崎にもいらっしゃって、箱崎なのに「博多手一本」をしてしまう人が時々いるんです。今回の放生会でも1回聞きました。周りの人が「祭りが違うみたいだ」という不満が出ていました。
武田：ちょっと陽気な締め方ですね、リズム感があって。
神戸：箱崎中学校の運動会でもやるし、地域ではみんな知っています。鉦と太鼓の音と、箱崎の1本締めが入ると「地元だなあ」という感じがします。それぞれの地域であるのではないでしょうか。いろいろな地域でどんな締めをしているのか知りたいです。「うちの地域では締め方が違うんだよ」という方、ぜひ番組に情報を知らせてください。こういったことを大事にしていく文化を残していきたい、と思っています。
※リスナーの「パパのパパ」さんからすぐにメールが届き、番組のラストで紹介しました。福岡県うきは市吉井町での締め方だそうです。
「祝いましょ」（パン・パン）
「もひとせ」（パン・パン）
「祝おうてさんごん」（パン・パン・パン）
◎神戸金史（かんべ・かねぶみ）
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件や関東大震災時の朝鮮人虐殺などを取材して、ラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。
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