「政治ドキュメントはエンタメを下支えする」松尾潔が映画『国葬の日』を絶賛

音楽プロデューサー・松尾潔

安倍元首相の国葬が執り行われてから、まもなく1年。全国10都市の“その日”を淡々と追った、大島新監督の映画『国葬の日』が公開された。監督とのトークショーを行ったという音楽プロデューサー・松尾潔さんが9月18日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、政治ドキュメントの魅力を語った。

大島新監督の新作『国葬の日』公開

ドキュメンタリー映画監督の大島新という人物をご存知でしょうか。大変ユニークかつ個性的な画作りで知られていて、このところを話題作を次々に発表しています。

まずは『なぜ君は総理大臣になれないのか』という2020年の映画です。この映画でキネマ旬報の「文化映画」というカテゴリーで第1位を受賞しました。続く『香川1区』も、前作と同じく香川県選出の衆議院議員、小川淳也さんを描いた映画です。

その大島新監督の新作『国葬の日』が東京で9月16日から公開されました。週末に開かれた舞台挨拶と公開トークは、ポレポレ東中野という上映館であり、実は大島監督の対談相手を私が務めました。

全国10都市の“国葬の日”を描いたドキュメンタリー

この『国葬の日』は、安倍晋三元首相の国葬が執り行われた去年9月27日、全国10都市でどんなふうに1日が過ぎていったのかというのを淡々と描いた1時間半程度のドキュメンタリー映画です。

10都市とは、①国葬が執り行われた東京、②安倍さんの地元・山口下関、③日本の古都、京都、④震災被災地である福島、⑤基地のある沖縄、⑥北の都、北海道、⑦安倍さんが銃撃された奈良、⑧⑨被爆地である広島と長崎。そしてもう一つ、⑩葬儀が執り行われる直前に水害に見舞われた静岡市清水区。あのとき清水では断水が長引いて、自衛隊員の数が足りないなどさまざまな報道がされていました。

90分程度で10都市を描いて、それぞれの町でインタビューを3人ずつくらい、合わせて40~50人ぐらい撮っています。音楽もナレーションもなく淡々と、映像とテロップだけで進んでいきます。

これを見ると「日本って広いんだな」と思いましたね。東京では物々しい警備の中、反対する人もいれば賛成する人もいて、献花する人もいる。一方で、北海道では幸せそうな結婚式が行われていて、沖縄・辺野古ではこの日も、基地建設の反対運動が起こっている。

それは国葬の日だから起こっていることではなく、毎日のように過ぎていく日常でもあるわけです。東京の中だって、国葬一色かというとそうではなく、朝10時の開店に合わせてパチンコ屋の前には行列がいつものようにできています。そういう視点はシニカルな要素も含んでいています。

どこかで起こっていることを自分のこととして捉えられるかを試される

僕は大島監督とは2年ほど前から多少面識はあったものの、人前で対談をするのは初めての機会でした。1969年生まれ、同じ時期に同じ大学に通った者同士でもありますが、知り合ったのはつい最近です。

父親はかの有名な大島渚監督、僕の世代のヒーローです。そのご子息ということもあって、大島新監督の見ること、語ること、やることは知り合う以前から気になっていました。

トークショーでも本人に直接言ったんですが、大島監督は紳士的な人柄でありつつも、作品ではいい意味で冷静な眼差しを失わない、底意地の悪さがよく出ていました。

例えば、沖縄での熱い反対運動のシーンを見せた直後に、札幌の幸せそうな、これから結婚式を挙げるカップルがカメラに向かって「はいゼクシィ」なんて言っているシーンが出てくる。クスッと笑いが出ちゃったりするんですね。

監督に「狙ったでしょ?」って聞いたら、「はい、狙いました」って。こうした、どこかで起こっていることを、どれぐらい自分のこととして捉えられるかということが、観る人に試されるような作品です。つまり、見終わった後にモヤモヤっとした自分自身の罪悪感とか、いろんなものと向き合わなきゃいけなくなっちゃうんです。

一方で、静岡市清水区のシーンは見ていて清々しい気分にもなるんです。街の惨状を見て、自衛隊員の数が足りないという中で心を痛めるのですが、そこで、進学校でもあり、サッカーの強豪校として知られる清水東高校のサッカー部の子たちが、ボランティアで汗流して動き回るんですよね。そういうところに希望を見出す瞬間もありました。

政治ドキュメントも音楽のように楽しんで

僕は大島監督だけでなく、五百旗頭幸男監督などの優れた政治ドキュメンタリーを撮る方々の映画について、SNSでよく発信するようにしています。このことについて大島監督から「松尾さんはエンターテインメントの世界で仕事をしながら、なぜこういうドキュメンタリー映画の世界に興味を持つんですか?」と聞かれたんですね。

そのとき僕はこんなふうに答えました。エンターテイメントはどれだけメジャーで、スケールが大きくなったとしても、所詮それはひと時の憩いでしかない。その憩いがたとえどんなに贅沢な憩いになったところで、エンターテインメントによって、世の中を変えられるかというと、たとえば戦争を止めたりする力までは、残念ながらない。

せいぜい、何かを忘れさせてくれたり、明るい気持ちにさせてくれたり、そうした中で「戦争なんかより他にも楽しいことあるよな」という気持ちにさせてくれる程度だと。でも政治というものに正面から向き合ったこういうドキュメンタリー映画は、エンターテインメント等を楽しむための社会をきちんと下支えしてくれるような存在であり、僕は敬意を持っています。平和な世の中がなければ、エンターテインメントを楽しめませんから。

僕のその答えに監督も納得したのか「なるほどなるほど」というふうに頷いていました。あなたも音楽や娯楽を楽しむようなつもりで、この『国葬の日』を観てみてください。

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田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、武田伊央、松尾潔
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※放送情報は変更となる場合があります。

小沢健二とスチャダラパーの新曲が頂点に! J-WAVEの春キャンペーンソング【最新チャート】

J-WAVEで放送中の番組『SAISON CARD TOKIO HOT 100』で小沢健二とスチャダラパーの『ぶぎ・ばく・べいびー』が1位を獲得した。

このチャートは、J-WAVE全番組のオンエア回数、Billboard JAPAN協力の各音楽ストリーミングサービス、ダウンロード、動画再生回数、CDセールス、SNSのポスト回数をポイント計算。番組では世界の音楽シーンからJ-WAVEが厳選した100曲をカウントダウン。ここでは4月28日(日)付のチャートを紹介!

10位:BREIMEN『ラブコメディ』

先週から2ポイントアップでトップ10入りしたのは5人組オルタナティブファンクバンドBREIMEN。『ラブコメディ』はメジャー1stアルバム『AVEANTIN』収録曲だ。現在アルバムリリースを記念したツアー中で、初日の東京はすでに終了しているが6月28日(金)KT Zepp Yokohamaでの追加公演が発表された。

9位:REMI WOLF『Cinderella』

先週3位から6ポイントダウンで9位に。7月12日(金)に2ndアルバム『Big Ideas』をリリースするREMI WOLF。7月26日(金)にはフジロックフェスティバルに出演する。

8位:Beyoncé『Texas Hold 'Em』

先週から1ポイントダウンしたものの安定したオンエアで今週もトップ10圏内をキープした。ニューアルバム『Cowboy Carter』のリリースに合わせてサプライズで来日を果たしていたBeyoncéだが、最近Instagramで来日していたときの様子を公開し始めた。先週の新幹線グリーン車移動の様子に続いて、今週はデコトラの前でのポージングやコンビニでの買い物、夫であるJay-Zと麻布台ヒルズにあるチームラボを訪れた様子などを公開している。

7位:藤井 風『満ちてゆく』

エントリー6週目、先週から2ポイントダウンで7位に。最新情報をゲットできる藤井の公式アプリ『Fujii Kaze』で更新された情報によると現在、藤井はLAにいるそうで、アプリではレストランでくつろぐ様子やスタジアムにいる姿がアップされている。8月24日(土)、25日(日)の2デイズ日産スタジアムでライブを実施する藤井。チケットに関する詳細は5月10日(金)18時に発表される予定だ。

6位:Rosa Linn『Universe』

先週から2ポイントアップで6位に。『Universe』はJ-WAVEがお勧めするSONAR TRAXの4月リストに入っている。イントロやサビで歌われている高音のコーラスが耳に残る同曲だが、Katy Perry、Miley Cyrus、JONG KOOKなどを手掛けるCirkutが制作に携わっている。

5位:宇多田ヒカル『traveling(Re-Recording)』

宇多田ヒカルは『traveling(Re-Recording)』で今週の『TOKIO HOT 100』5曲目のエントリー。7月13日(土)から6年ぶりとなる全国ツアーがスタートする宇多田。9月まで全国各地を回り、8月には台北、香港でもそれぞれ2日間ずつ、両都市でキャパシティ1万人以上のアリーナでライブを実施。海外でも絶大な人気ぶりだ。

4位:ILLIT『Magnetic』

先週と順位変わらず今週も4位に。2023年9月、韓国のサバイバル番組『R U Next?』での選考をもとに現在5人組として活動しているILLIT。韓国人3人、日本人2人で構成される5人組ガールズグループで『Magnetic』はJ-WAVEでのオンエア以外にサブスクでの再生回数、動画再生回数のポイントを大量にゲットしている。

3位:Vampire Weekend『Classical』

残念ながら2連覇ならず今週は3位に。Vampire Weekendはコーチェラ・フェスティバルでパフォーマンスをおこなった際、ステージにParis Hiltonを招き入れたことが話題に。先日、Paris自身のInstagramにステージを終えたメンバーと談笑する動画がアップされた。そのなかでVampire Weekendのメンバーが「僕らのテレビ初出演は『Letterman』で、そのときのゲストがParisだった。今日は16年ぶりにお会いできて光栄でした」と丁寧に語っていた。

2位:米津玄師『さよーならまたいつか!』

NHK連続テレビ小説『虎に翼』の主題歌『さよーならまたいつか!』がエントリー2週目にして今週は2位に。来週は頂点を狙うポジションだが、果たして2023年5月の『M八七』以来のナンバーワンを獲得できるのか。

1位:小沢健二とスチャダラパー『ぶぎ・ばく・べいびー』

J-WAVEのスプリング・キャンペーン「PLAY IT BACK, BOOGIE BACK!」のテーマソング『ぶぎ・ばく・べいびー』が頂点に立った。この日の『TOKIO HOT 100』には小沢とスチャダラパーのANIとSHINCOがゲストで登場。『ぶぎ・ばく・べいびー』というタイトルにはかなり深い意味が込められていることを明かした。トークは2024年5月5日28時ごろまで、radikoのタイムフリー機能で楽しめる。

再生は2024年5月5日28時ごろまで



小沢は5月1日(水)からツアーをスタート、さらに8月31日(土)にはアルバム『LIFE』の30周年を記念した完全再現ライブを日本武道館で開催。詳細は小沢のホームページをチェック。

1位:小沢健二とスチャダラパー『ぶぎ・ばく・べいびー』
2位:米津玄師『さよーならまたいつか!』
3位:Vampire Weekend『Classical』
4位:ILLIT『Magnetic』
5位:宇多田ヒカル『traveling(Re-Recording)』
6位:Rosa Linn『Universe』
7位:藤井 風『満ちてゆく』
8位:Beyoncé『Texas Hold 'Em』
9位:REMI WOLF『Cinderella』
10位:BREIMEN『ラブコメディ』


『SAISON CARD TOKIO HOT 100』ではさまざまなデータをもとに、世界の音楽シーンからJ-WAVEが厳選した100曲をカウントダウン。放送は毎週日曜の13時から。

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