「ふるさと納税」返礼品”増量”で終わらない自治体の競争

毎年、年末に駆け込み需要を迎えるものといえば「ふるさと納税」だ。過剰な返礼品競争は「寄付額の3割まで」というルールで落ち着いたようだが、それでもまだ、いろいろな問題があるという。曲がり角に来ている「ふるさと納税」について、元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんがRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で解説した。

元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎

牛肉1.5kgを500gに変更!苦情殺到の自治体

いま、苦情や批判が殺到している自治体があります。宮崎県都農町です。「1万円の寄付で、宮崎牛切り落とし1.5kg」届くはずが、いわゆる3割ルールを大幅に超えていたとして発送を止め「返金か3分の1の500gで勘弁してほしい」と申込者に連絡してきました。発送を待っている約1万5000人から苦情が殺到しているそうです。なぜこのようなことが起こったかというと、町の想定を大幅に超える申し込みで肉が足りなくなり、別の業者に発注したところ、秋口からの需要回復で肉の値段が上がって、1.5kgでは仕入れ値が8000円を超え、これが「とんでもない返礼率違反になっている」と町の顧問弁護士から指摘されたからだそうです。楽しみに待っていて、今さらこんな案内が来たら、立腹するのももっともですが、ルール違反が分かった以上、残念ながら今回は諦めるしかなさそうです。それにしても都農町は評判を落として、これから大変でしょうね。

「ふるさと応援」という趣旨は生かされているのか?

ここからは毎日新聞の連載「検証・ふるさと納税」が問いかける“制度のひずみ”について考えます。ひとつ目の論点は「ふるさと応援」という制度本来の趣旨は生かされているのか、です。私も2008年のふるさと納税制度発足時の趣旨には賛同しました。というのも、かつて毎日新聞長崎支局在勤中、当時の高田勇・長崎県知事とこんな話をしたからです。それは1999年、当時の石原慎太郎東京都知事が、鹿児島の小さな離島に建設中の道路について、それがテレビを見られるように中継基地を造るための道路と調べもせず「誰が何しに行くか分からない道路」と批判し「地方交付税という制度がおかしい」と言ったときのことです。高田知事は「長崎県は、中学や高校まで一生懸命育てあげた子どもたちを毎年、何千人も都会に出し、その多くは都会で就職して税金を納めている。そのことを、彼はご存じなのかな」と静かに憤っていました。だから私はふるさと納税の制度ができたとき、これを思い出して賛同したのです。

それが、現状はどうでしょう。毎日新聞の調べでは、都会だけでなく地方の市や町でも、人気の返礼品を持たない自治体では、寄付で受け取る額より住民税が減る額の方が大きい「赤字」になる自治体があり、その数は都市部を除いて200を超えています。去年の寄付受け入れ額は、トップの宮崎県都城市、2位の北海道紋別市、3位の北海道根室市まで100億円を超え、上位の20自治体だけで全体の2割を占めるという極端な偏りがあります。

都市部の住民税が流出「学校や高齢者施設の整備先送りに」

ふたつ目の論点は、都市部の住民税流出です。都道府県別の赤字は東京都の613億円を筆頭に、神奈川県271億円、大阪府165億円、愛知県138億円など三大都市圏で大きく、福岡県でも政令市の福岡市で29億円、北九州市で10億円の赤字です。このうち流出額が実質全国トップの東京都世田谷区は今年、赤字が70億円に達する見込みで、保坂区長は先日の記者会見で「この先さらに増えていけば、造るべき学校の校舎や高齢者施設の整備が先送りされるなど、明らかな影響が出る」と訴えました。

国の補助金制度で返礼品が”増量”され競争激化

最後の論点は、収まらない返礼品競争です。国は一昨年、過熱する競争を抑えるため「返礼品は地場産品に限り、寄付額の3割まで」というルールを厳格化し、従わない自治体はふるさと納税の対象から外しました。引き金となったのは、2018年度に500億円近くを集めた大阪府泉佐野市で「アマゾンギフト券最大40%分」という返礼もありました。しかし、ルールが厳しくなってからも「抜け道」はありました。例えば宮崎県小林市はこの夏「モリモリ増量フェア」というキャンペーンで、1万円でもらえる牛肉の量を1kgから1.5kgに増量したり、同じ量がもらえる寄付額を3000円引き下げたりするなどした結果、牛肉を返礼品とした寄付額は昨年の4倍になりました。

それができたのは、農水省の補助金です。コロナ禍で売り上げが減った農水産品を支えるため、仕入れ費用の半額が補助される事業で、小林市はこれを使って、牛肉を実質半額で仕入れ、その分を増量や値下げに回したわけです。また、同じ制度で高知県須崎市は今年、ウナギを返礼品とした寄付件数を前年の50倍にまで増やしました。法的には問題ないそうですが、コロナ禍の支援制度が返礼品競争の抜け道になっているというのは、どうなんでしょう。

また、返礼品を紹介するネット上のサイトも、お客さんを囲い込むため、ふるさと納税以外の買い物にも使えるポイントを付与したりしているので、それを合わせれば、既に3割ルールは形骸化しているという指摘もあります。ちなみに、紹介サイトの掲載料は寄付額の10%以上と言われ、その分は自治体の負担ですから「結局、地方の収益が都会にあるサイトの運営会社に吸い上げられている」という批判もあります。

菅前首相退陣で再度の見直しは避けられない?

再びさまざまな問題点が浮かび上がっている「ふるさと納税」。総務大臣当時に制度を作り、その後も旗振り役だった菅前首相は退陣しましたから、おそらく返礼率の引き下げなど再度の見直しは避けられないだろうと、私は見ています。ただ、東日本大震災や熊本地震などの際、ふるさと納税を使って多くの義援金が送られたのも事実で、故郷や地方の応援という本来の趣旨には、今も賛同しています。

櫻井浩二インサイト
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:櫻井浩二、高橋早紀、潟永秀一郎
番組ホームページ
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※放送情報は変更となる場合があります。

鈴木おさむ“小説SMAP”メディアでの取り上げられ方に言及「テレビの本ですが、やはりテレビでは紹介しにくいわけです」

科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 4月13日(土)、4月20日(土)の放送ゲストは、ベストセラー作家への道を歩んでいる、元放送作家の鈴木おさむさんです。20日(土)の放送では、著書である“小説SMAP”こと『もう明日が待っている』(文藝春秋)の内容や、出版前の裏話などについて伺いました。


鈴木おさむさん



1972年生まれ、千葉県出身の鈴木さん。19歳で放送作家としてデビューし、それから32年間、さまざまなコンテンツを生み出してきました。
2024年3月末をもって放送作家・脚本家を引退。現在は、「スタートアップファクトリー」を立ち上げ、スタートアップ企業の若者たちの応援を始め、コンサル、講演などもおこなっています。
3月27日(水)に刊行した著書『もう明日が待っている』は、発売2日で累計発行部数15万部を突破。同著の著者印税は、すべて能登半島地震の義援金として寄付されます。

またTOKYO FMでは現在、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのリーダー・陣さんとともに音楽チャートラジオ番組「JUMP UP MELODIES」(毎週金曜13:00~14:55)のパーソナリティもつとめています。



鈴木:(『もう明日が待っている』には)「黒林さん」というプロデューサーも出てきます。(本名は)黒木(彰一)さんと言って、54歳でお亡くなりになられた方です。ずっと一緒に番組を作っていて、この(小説の)なかでもマイケル・ジャクソンを(SMAP×SMAPに)引っ張ってきた、すごくファニーなキャラクターの人です。

茂木:あれもすごいことでしたね。

鈴木:そうです。マイケル・ジャクソンを呼んでね。「まぁ、小説だからいいか」ということで、呼んだ金額まで書いているんですけど(笑)。その黒木さんがご病気で、「もしかしたら危ないかも」と思って。だから今回、よりスタッフの話を残したんですよ。

ちょうど、この本のゲラ(※誤字・脱字などのチェックをおこなうために仮に印刷した印刷物)が全部出てきたときに、黒木さんのご病気が少し悪くなって、「会いたい」と言われて会ってきたんです。

それが金曜日だったのですが、(出版元の)文藝春秋に頼んで、ゲラをまとめて表紙を付けて仮の本にして渡すことができたんですよね。たぶん読んでくれて、その夜に「おもしろかったです。ありがとうございます」というメールが来ました。シンプルな文でしたが、メールを打つのもしんどかったと思います。なぜなら、金曜日に読んでいただいて、月曜日の夜にお亡くなりになられましたから。それぐらい体力的にも限界のなかで(本を読んで、メールをくださった)。

茂木:でも、間に合ってよかったですね。

鈴木:そうなんです。それでお葬式に行ったら、娘さんが「うちの父は本を読むのが本当に好きな人で、最後の本がこの本になりました」と言ってくれて。だからそこも含めて、僕らスタッフのなかでも本当に最後に「〇(丸)」を付けることができたというのもあります。

でも僕がおもしろいなと思うのは、テレビのためにずっとやってきて、言ってみれば(『もう明日が待っている』は)テレビの本なんですけど、やはりテレビでは紹介しにくいわけですよ。

茂木:いろいろな事情でね。

鈴木:はい。テレビのランキング番組の“(小説売上)ランキング”に入っているのですが、(紹介されるのはタイトル名と僕の名前)「『もう明日が待っている』鈴木おさむ」だけで、SMAPの「ス」の字も言わない。

それは仕方がないんです。だけど、放送作家が最後にテレビの本を書いて、それがテレビで紹介されないというのもおもしろいし、だからこそ絶対にミリオン(100万部)売れてほしいと思います。

番組では他にも、鈴木さんが今後の目標について語る場面もありました。


(左から)鈴木おさむさん、茂木健一郎



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4月20日(土)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月28日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00~22:30
パーソナリティ:茂木健一郎

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