サブスク時代の“新定番ガイド”観るべき映画150本のリスト一挙公開!

左から田畑竜介アナウンサー、神戸金史RKB解説委員 ©RKBラジオ

観ることができる映像があふれる時代。どんな映画を見たらよいのか?RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、RKBの神戸金史(かんべ・かねぶみ)解説委員が紹介したのは、新聞社の元学芸記者が書いた新刊書「平成ロードショー 全身マヒとなった記者の映画評」(忘羊社・税別1800円)だ。本の中で採り上げた映画の数は、150本を超す。著者の許可を得て、「最良の映画リスト」を本文末に公開する。

病に倒れた学芸記者

映画情報満載の「平成ロードショー」。福岡市の出版社「忘羊社」から出版されたばかりの本です。毎日新聞西部本社の学芸記者だった矢部明洋さんが書いた映画批評やコラムをまとめたものなんですが、RKBラジオのリスナーには2013~14年に『開店!ウメ子食堂』に毎週出演していた矢部さんをご存知の方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。

番組MC:毎週水曜日は毎日新聞の矢部明洋さんの担当です。

矢部明洋さん:いま公開中の『ミリオンダラー・アーム』、野球映画です。100万ドルの腕ちゅうて、アメリカのメジャーがインドに行って、剛速球投手を探して連れてきて、メジャー入りさせようというお話です。面白そうでしょ?娯楽映画としては、ほぼ満点に近いよ」

(RKBラジオ『開店!ウメ子食堂』2014年10月15日)

この声、聞き覚えがある方がいらっしゃるんじゃないかな。ちょっと京都の言葉が入っているんですよね。この放送が2014年10月。翌11月に矢部さんは自宅で倒れてしまいまして、脳梗塞と脳内出血で脳の両側にダメージを受けて、意識が戻るかどうかもわからない危篤状態になってしまいました。ですからその後、RKBラジオには出ていません。本の表紙には、かわいいイラストが描かれています。矢部さんのパートナーの高倉美恵さんが描いています。絵が上手なんですよね。その高倉さんが「解説にかえて」で書いています。

「体の麻痺は全身に及び、食事は口からとれず喋ることもできない日々が続き、四ヵ月近くたってようやく自分の名前を覚えていることがわかった。透明の文字盤を視線で辿り、自分の名前を示した。たったこれだけのことにどのくらいの希望が詰まっているか、おわかりいただくのは難しいかもしれない。(中略)自分の名前を文字盤で示せた、ということは、『なまえを教えてください』という言葉の意味がわかり、文字盤の文字がちゃんと見えて、そのひらがなを理解し、自分の名前を覚えている、ことにほかならない」

眼球が動くことで、少しずつコミュニケーションを復活させていく。それを一つ一つ家族が確認していく。大変な病に見舞われたんです。今回の本は、矢部さんが現役の記者当時に書いたものですが、巻頭文は矢部さん自身が書いています。当然ですが、眼球を動かしながら文字盤をたどって書いた文章だと思います。

「公開本数が増えシネコンも増えたが、年間に見るべき映画は私が中学の頃から二十本もないのが実感だ。とりあげる作品に困る週もあったが、収録されている映画は厳選に厳選を重ねたものばかりと自負している」

観たい映画がいっぱい!

この本を取り寄せて読んでみたんです。とにかく面白いんですよね。新聞に書いていた短評なので要領がよくて。矢部さんは本当に映画が好きで、京都での幼い子供時代からよく観に行っていた蓄積が、いっぱい背景に入っています。数えてみたんです。映画評が146本。それと、亡くなった映画人を追悼するコラムとかもあるので、200本以上紹介されているようですね。

自分が見た映画は一体何本あるだろうだろうかと、一覧表にしてチェックを入れてみたんですが、2割ないんですよね。「観落としたなあ」という映画も、知らないものもいっぱい。矢部さんの文章を見ていて「ああ、これ観たいなあ!」「サブスクで今だったら観られるんじゃないかな?」と思ったんです。自分が今後何を観るか。「ここにある映画から探していこう」と思って、リストにしたんです。本を最後まで読んだら、高倉美恵さんが書いていました。

「平成の映画の話をしつつも、その源流となる昭和の作品に触れたり、社会の中での作品の位置などを新聞記者的な視点で語るところにあり、サブスク配信で多様な映画を見ることができる、今どきの映画ガイドとしてお役立ていただけるなら、私たち夫婦にとって望外の喜びである」

だから今、「平成ロードショー」という本にした。今の時代に観てほしい映画が集まっている。「過去の映画を書いた、過去の文章」じゃないんです。今の私たちにとって非常に参考になる映画評が、いっぱい載っている本なんです。私が一番好きな映画も出ていた。2010年の『息もできない』という韓国映画。これ、素晴らしかったんですよね。衝撃を受けた。矢部さんは「10年に一本の傑作である」と。

短い評なんですけど、そこにはいろいろな情報が入っていて、全然知らないことがいっぱい書かれている。例えば「黒沢組の孫さん」というコラム。黒澤明監督の現場には、クレジットに絶対出ない「長田孫作さん」という人がいつもいた、と。本業は農業なのに、エキストラを集めるといったお手伝いをしていたんだそうです。孫さんが入院した折には、黒沢さんは「一緒に百歳まで撮ろうよ」と病床をお見舞いした。

矢部さん、今も映画観てる!

そして僕が感動したのは、「あとがき」に矢部さん自身が書いていたことです。

「タランティーノやスピルバーグの作品は、車イスになってからも映画館に見に行くようにしているが、ミニシアターや遠方へはそう簡単には行けなくなった」

矢部さん、今も映画観てるんだ!高倉美恵さんに電話して聞いたら、実は倒れて1年ぐらいしてから、映画館に車椅子を押して夫婦で行くようになっている、と。コロナでしばらく行けなかったけど、やっとまた行けるようになってきました、と。うれしいな。「映画観てるんじゃないか!」と。だったら、文字盤で文章を書くのは大変だと思いますけど、新しい「令和のロードショー」みたいな本を書いてほしいな。時間はかかるかもしれないけど、書いてほしいなと思いました。

「平成ロードショー」矢部明洋・著

矢部明洋著「平成ロードショー 全身マヒとなった記者の映画評 1999~2014」(忘羊社・税別1800円)

https://bouyousha.com/archives/819

※矢部明洋さんと高倉美恵さんのお許しをいただき、『平成ロードショー』の目次から、採り上げた映画の一覧を掲載します。まさに、「サブスク時代の“新定番”シネマガイド」です。

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田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、武田伊央、神戸金史
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※放送情報は変更となる場合があります。

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