松尾潔「政治や経済が国の“大動脈”なら音楽は“毛細血管”」の意味

音楽プロデューサー・松尾潔氏

イギリスのエリザベス女王が逝去した。今年6月に催された女王即位70周年の祝賀コンサートを見た音楽プロデューサー・松尾潔さんは「イギリスという国の奥深さを感じた」という。RKBラジオ『田畑竜介 Groooow Up』に出演した松尾さんは「政治や経済が国の“大動脈”なら、音楽は“毛細血管”のように、大動脈が行き届かない細かいところにまで入っていくことができる」とも語った。

プラチナ・パーティーの幕開けは、QUEENの「We Will Rock You」

6月に催されたエリザベス女王即位70周年の祝賀コンサート。プラチナジュビリーっていうそうなんですけど、その中の一環として、バッキンガム宮殿でコンサートが行われて、正式な言い方で言うと「Platinum Party at the Palace」。そのコンサートはQUEENの「We Will Rock You」で始まりました。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』以降、僕らにとってイギリスといえば、真っ先に挙がる曲になっているかもしれません。やっぱり本国でもそうなんだなあと思いました。まるで、サッカーの試合の始まりのように、QUEENの曲って、人が集うときに高揚感をどんどん高めていくのに、大変長けているなと思いました。

この「We Will Rock You」で始まり、「We Are The Champions」というおなじみの曲も演奏しました。もちろんフレディ・マーキュリーは亡くなっていますから、最近QUEENの世界ツアーで帯同しているアダム・ランバートがボーカルを務めて、その大役を果たしました。

エリザベス女王の祝賀会でアメリカのミュージシャンが演奏

このコンサートは、ポップス、ロックのみならず、ミュージカルのスターもたくさん出てきました。メインはQUEENをはじめ、クレイグ・デイヴィッドやロッド・スチュワート、デュラン・デュランとか、世界的に人気を博したイギリスの大スターたちなんですが、面白いなと思ったのは、意外にもアメリカのスターも結構出演しているんです。

これを日本に置き換えると想像しにくいと思います。例えばこの日。アメリカの曲であるNeil Diamond の「Sweet Caroline」をイギリスのロッド・スチュワートが歌いました。しかも彼は「これ、僕の歌じゃないからあんまり歌いたくないんだけどね」っていう皮肉めいたジョークまで言っている。これ、もし日本でたとえたら、皇居でジャニーズの人たちがBTSの曲を「僕らの曲じゃないんだけど」って言いながら、だけどみんなで楽しく歌っている、そんなイメージでしょうか。風通しいいよなあって思いますよね。

実際その後は、現代のアメリカの音楽シーンを代表するAlicia Keysが登場して、故郷でもあるニューヨーク賛歌のような「Empire State Of Mind」をエリザベス女王70周年パーティーで歌っちゃう。さすがに、サビに出てくる「ニューヨーク」っていう部分は「ロンドン」って歌っていましたが。だけどこういう演出もエンターテイメント大国だなって。誰も傷つけずに、みんなを笑顔にする術を知っている人たちだなと思いましたね。

さらにアメリカのソウルミュージック界の女王Diana Rossが登場して、日本でも愛されている「Ain’t No Mountain High Enough」を歌いました。ルーツを同じくする人たちがいるからだとは思いますが、改めてイギリスとアメリカの歴史にも思いを馳せるきっかけにもなりました。

そしてこういうイベントには欠かせない人ということで登場したのがElton Johnです。Elton Johnといえば、かつてエリザベス女王との確執が漏れ聞こえてきたダイアナ元妃と親交が深かったことで知られていますが、それを承知の上で、女王の70周年に彼が登場したのは、時の流れも感じさせるし「音楽というものはいろんなことを自由にするんだな、音楽ってこういう使い方するのが一番いいんだな」って思わせてくれましたね。

政治や経済が国の“大動脈”なら音楽は“毛細血管”

Elton Johnは「Your Song」を歌いました。イギリスはこういう曲を持っている、所有している。国のイメージを具体的に形成しているのは、政治の力だけでもないし、経済の力だけでもない。こういった大衆文化、ポップカルチャーが、大きく寄与します。

僕の持論ですが、政治や経済が国の“大動脈”だとすれば、大衆音楽は“毛細血管”のように、政治とか経済とかが行き届かない細かいところにまで入っていくことができる。それだけではもちろん国は成り立たないですし、音が国を変えることはないかもしれないが、やっぱり毛細血管が止まる、たとえば血栓があったら、しなやかな動きができない。

そういう意味でも、改めて国家のあり方を考えさせられる、そういう奥行きのあるコンサートでしたね。僕は現地に行ったわけではなく、映像で見ただけなんですが。今月の終わりに衛星放送で放映されるようなので、機会があれば見ていただきたいです。

エリザベス女王の“功罪”

エリザベス女王は日本でも大変人気の高い国王でしたが、彼女の人生を振り返ってみると、例えば、今なお続くイエメンの内戦の元々の理由のところに彼女がいて、決して世界中の全ての人から好ましく思われたっていうだけでもないと思うんです。中東やアフリカといった、かつて統治されていた人たちからすると、複雑な感情もあると思うんです。

だけど、そういった人たちが亡くなるときに、我々はどういう気持ちで、この喪の作業というのをやるのか。やはり功罪見極めて、歴史に名を残す人を見送るっていう意味で、これは今の日本の国葬騒ぎに対する皮肉も込めて言っていますが、改めて考えてみたい。音楽人の立場でお話させていただきました。

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
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※放送情報は変更となる場合があります。

鈴木おさむ“小説SMAP”メディアでの取り上げられ方に言及「テレビの本ですが、やはりテレビでは紹介しにくいわけです」

科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 4月13日(土)、4月20日(土)の放送ゲストは、ベストセラー作家への道を歩んでいる、元放送作家の鈴木おさむさんです。20日(土)の放送では、著書である“小説SMAP”こと『もう明日が待っている』(文藝春秋)の内容や、出版前の裏話などについて伺いました。


鈴木おさむさん



1972年生まれ、千葉県出身の鈴木さん。19歳で放送作家としてデビューし、それから32年間、さまざまなコンテンツを生み出してきました。
2024年3月末をもって放送作家・脚本家を引退。現在は、「スタートアップファクトリー」を立ち上げ、スタートアップ企業の若者たちの応援を始め、コンサル、講演などもおこなっています。
3月27日(水)に刊行した著書『もう明日が待っている』は、発売2日で累計発行部数15万部を突破。同著の著者印税は、すべて能登半島地震の義援金として寄付されます。

またTOKYO FMでは現在、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのリーダー・陣さんとともに音楽チャートラジオ番組「JUMP UP MELODIES」(毎週金曜13:00~14:55)のパーソナリティもつとめています。



鈴木:(『もう明日が待っている』には)「黒林さん」というプロデューサーも出てきます。(本名は)黒木(彰一)さんと言って、54歳でお亡くなりになられた方です。ずっと一緒に番組を作っていて、この(小説の)なかでもマイケル・ジャクソンを(SMAP×SMAPに)引っ張ってきた、すごくファニーなキャラクターの人です。

茂木:あれもすごいことでしたね。

鈴木:そうです。マイケル・ジャクソンを呼んでね。「まぁ、小説だからいいか」ということで、呼んだ金額まで書いているんですけど(笑)。その黒木さんがご病気で、「もしかしたら危ないかも」と思って。だから今回、よりスタッフの話を残したんですよ。

ちょうど、この本のゲラ(※誤字・脱字などのチェックをおこなうために仮に印刷した印刷物)が全部出てきたときに、黒木さんのご病気が少し悪くなって、「会いたい」と言われて会ってきたんです。

それが金曜日だったのですが、(出版元の)文藝春秋に頼んで、ゲラをまとめて表紙を付けて仮の本にして渡すことができたんですよね。たぶん読んでくれて、その夜に「おもしろかったです。ありがとうございます」というメールが来ました。シンプルな文でしたが、メールを打つのもしんどかったと思います。なぜなら、金曜日に読んでいただいて、月曜日の夜にお亡くなりになられましたから。それぐらい体力的にも限界のなかで(本を読んで、メールをくださった)。

茂木:でも、間に合ってよかったですね。

鈴木:そうなんです。それでお葬式に行ったら、娘さんが「うちの父は本を読むのが本当に好きな人で、最後の本がこの本になりました」と言ってくれて。だからそこも含めて、僕らスタッフのなかでも本当に最後に「〇(丸)」を付けることができたというのもあります。

でも僕がおもしろいなと思うのは、テレビのためにずっとやってきて、言ってみれば(『もう明日が待っている』は)テレビの本なんですけど、やはりテレビでは紹介しにくいわけですよ。

茂木:いろいろな事情でね。

鈴木:はい。テレビのランキング番組の“(小説売上)ランキング”に入っているのですが、(紹介されるのはタイトル名と僕の名前)「『もう明日が待っている』鈴木おさむ」だけで、SMAPの「ス」の字も言わない。

それは仕方がないんです。だけど、放送作家が最後にテレビの本を書いて、それがテレビで紹介されないというのもおもしろいし、だからこそ絶対にミリオン(100万部)売れてほしいと思います。

番組では他にも、鈴木さんが今後の目標について語る場面もありました。


(左から)鈴木おさむさん、茂木健一郎



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4月20日(土)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月28日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00~22:30
パーソナリティ:茂木健一郎

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