“ロックでブラックなのに人懐っこい”異才・大澤誉志幸を松尾潔が語る

音楽プロデューサー・松尾潔氏

10月3日に65歳の誕生日を迎えた異才・大澤誉志幸。音楽プロデューサー・松尾潔さんはRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で「ロックでブラック。なのに口ずさみたくなる人懐っこさがある」と評した。さらに、代表曲「そして僕は途方に暮れる」の秘話も。かの名曲はアーティストへの楽曲提供後、“途方に暮れていた”という。

サブカルの街・高円寺で育つ

きょう10月3日は大澤誉志幸さんの65歳の誕生日です。今でこそ日本でもR&Bとか、アメリカのブラックミュージックをルーツとするような音楽が市民権を得ています。大澤誉志幸さんはその黎明期にイメージ作りに大きな貢献をした方です。出身地の東京・杉並区高円寺は多くのバンドマンも育っている、サブカルチャーのにおいがプンプンする街です。

地元の中学校の先輩後輩でブラザー・コーンさんも一緒でした。そういうところからすると割とブラックミュージックにご縁があった感じです。彼は駒澤大学を卒業した直後の1981年4月にクラウディ・スカイというバンドでレコードデビューしましたが、奇しくも、この81年4月にすれ違いで大学に入学してきたのが久保田利伸さん。なんだか日本のR&Bの歴史をコンパクトに語っているような感じです。

80年代前半に神がかり的な名曲を連発

なんといってもハスキーなボーカルが魅力の大澤誉志幸さんですが、作曲についても特筆すべき結果を出してきました。たとえば鈴木雅之さんの「ガラス越しに消えた夏」。大澤さんの作曲家としての代表作じゃないかと思います。他にも80年代の前半から半ばにかけては神がかり的な名曲を次々に出しています。

83年には中森明菜さんの「1/2の神話」。ザ・アイドル歌謡という感じなんですが、当時はアイドルが歌うにしては、ずいぶんとロックフィーリングでハードエッジな印象だなと思いました。「これ、書いてるの大澤誉志幸さんなんだ」と驚いた記憶がありますね。

大澤さんの曲はロックっぽいし、リズムもすごく強い。ブラックミュージックの影響を受けたことが随所に出ているんですが、併せてどこか口ずさみやすい、人懐っこさも含まれているんです。歌詞がつくことですごくわかりやすくなるんですけれども、何が言いたいかというと、メロディーメーカーというよりもソング。ミュージックというよりもソング。つまり歌に向かっている人なんだ、ということです。人が歌ったときに美しく聞こえるメロディーを作り出すことに長けた方なんです。

彼の作曲家としての黄金時代ともいえる84年には、吉川晃司さんの「ラ・ヴィアンローズ」という曲がリリースされています。大澤さんと吉川さんは個人的にも親交があったようで、さらに佐野元春さん、沢田研二さんも加えて、この4人は同じ製作マンが後ろに控えていました。ちょっとしたファミリーを形成していたところがあります。4人が互いに曲を提供し合うということもありました。

芸能と音楽の比重は常に我々を悩ませるものなんですが、日本の歌謡曲は、いわゆる“ザ・芸能界”的な色合いから時代とともにどんどん音楽そのものを重視するようになってきています。「テレビに出てお茶の間の人気者になるんだけど、音楽というところも譲れない」というアイドルの最初が吉川晃司さんだとすれば、その背後に大澤誉志幸さんがいたからということですね。

吉川晃司さんは当時、アーティストとして世の中に出て行きたいのに、アイドル的に人気を博して、相当苦労した、ということを本人から聞いたことがあります。けれど、こういう自分を支えてくれる盟友とも呼べるお兄ちゃんたちが、ロールモデルとしてすごく励みになった側面もあるんです。

さっき名前を出した沢田研二さんの「おまえにチェックイン」。40年前のトップ10ヒットです。『ザ・ベストテン』全盛時代の沢田研二さんは、新曲を出すたびに、そのスタイリング、衣装も「テレビでこんな表現するんだ」っていうような注目のされ方をしました。

この「おまえにチェックイン」は大澤誉志幸さんが作曲しているんですが、アレンジを手がけたのは伊藤銀次さん。冒頭の「チュッチュルチュッチュル」は、沢田さんと大澤さん、佐野元春さんと伊藤銀次さんの4人でコーラスしています。当時そういうこと意識せずに聴いていた方もたくさんいると思うんですが、テレビで聞ける音楽としては相当贅沢な布陣になっていたんです。

代表曲「そして僕は途方に暮れる」の誕生秘話

そして大澤誉志幸さん自身も歌い手としてのヒット「そして僕は途方に暮れる」も忘れてはいけません。さっきお話した「後ろの共通の製作者」というのは、木崎賢治さん。もう70代半ば、日本最高齢と言っても良い現役プロデューサーで、今でもBUMP OF CHICKENのプロデュースをしています。

この木崎賢治さんによると、この「そして僕は途方に暮れる」はもともと大澤さんが自分で歌うつもりはなく、鈴木雅之さんや山下久美子さんに提供しようとしたんだけど「ちょっと違う」って言って戻された曲だったんです。それを木崎さんが「そういえばあの曲あったよね」って言って、大澤さんが歌うことになりました。

当時カップヌードルのCMソングが、ヒットの生まれる場所みたいな時期でしたが、そこで見事にはまって、オリコン第6位にランクインして、大澤さんにとって代表曲になりました。当時TBS『ザ・ベストテン』でも第2位。この類の曲で、こういうアーティストの曲がベストテン第2位って当時インパクトがありましたね。当時高校生だった僕はこのとき「ああ、こうやって日本の音楽業界は刷新されていくんだな」と思いました。

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
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※放送情報は変更となる場合があります。

鈴木おさむ“小説SMAP”メディアでの取り上げられ方に言及「テレビの本ですが、やはりテレビでは紹介しにくいわけです」

科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 4月13日(土)、4月20日(土)の放送ゲストは、ベストセラー作家への道を歩んでいる、元放送作家の鈴木おさむさんです。20日(土)の放送では、著書である“小説SMAP”こと『もう明日が待っている』(文藝春秋)の内容や、出版前の裏話などについて伺いました。


鈴木おさむさん



1972年生まれ、千葉県出身の鈴木さん。19歳で放送作家としてデビューし、それから32年間、さまざまなコンテンツを生み出してきました。
2024年3月末をもって放送作家・脚本家を引退。現在は、「スタートアップファクトリー」を立ち上げ、スタートアップ企業の若者たちの応援を始め、コンサル、講演などもおこなっています。
3月27日(水)に刊行した著書『もう明日が待っている』は、発売2日で累計発行部数15万部を突破。同著の著者印税は、すべて能登半島地震の義援金として寄付されます。

またTOKYO FMでは現在、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのリーダー・陣さんとともに音楽チャートラジオ番組「JUMP UP MELODIES」(毎週金曜13:00~14:55)のパーソナリティもつとめています。



鈴木:(『もう明日が待っている』には)「黒林さん」というプロデューサーも出てきます。(本名は)黒木(彰一)さんと言って、54歳でお亡くなりになられた方です。ずっと一緒に番組を作っていて、この(小説の)なかでもマイケル・ジャクソンを(SMAP×SMAPに)引っ張ってきた、すごくファニーなキャラクターの人です。

茂木:あれもすごいことでしたね。

鈴木:そうです。マイケル・ジャクソンを呼んでね。「まぁ、小説だからいいか」ということで、呼んだ金額まで書いているんですけど(笑)。その黒木さんがご病気で、「もしかしたら危ないかも」と思って。だから今回、よりスタッフの話を残したんですよ。

ちょうど、この本のゲラ(※誤字・脱字などのチェックをおこなうために仮に印刷した印刷物)が全部出てきたときに、黒木さんのご病気が少し悪くなって、「会いたい」と言われて会ってきたんです。

それが金曜日だったのですが、(出版元の)文藝春秋に頼んで、ゲラをまとめて表紙を付けて仮の本にして渡すことができたんですよね。たぶん読んでくれて、その夜に「おもしろかったです。ありがとうございます」というメールが来ました。シンプルな文でしたが、メールを打つのもしんどかったと思います。なぜなら、金曜日に読んでいただいて、月曜日の夜にお亡くなりになられましたから。それぐらい体力的にも限界のなかで(本を読んで、メールをくださった)。

茂木:でも、間に合ってよかったですね。

鈴木:そうなんです。それでお葬式に行ったら、娘さんが「うちの父は本を読むのが本当に好きな人で、最後の本がこの本になりました」と言ってくれて。だからそこも含めて、僕らスタッフのなかでも本当に最後に「〇(丸)」を付けることができたというのもあります。

でも僕がおもしろいなと思うのは、テレビのためにずっとやってきて、言ってみれば(『もう明日が待っている』は)テレビの本なんですけど、やはりテレビでは紹介しにくいわけですよ。

茂木:いろいろな事情でね。

鈴木:はい。テレビのランキング番組の“(小説売上)ランキング”に入っているのですが、(紹介されるのはタイトル名と僕の名前)「『もう明日が待っている』鈴木おさむ」だけで、SMAPの「ス」の字も言わない。

それは仕方がないんです。だけど、放送作家が最後にテレビの本を書いて、それがテレビで紹介されないというのもおもしろいし、だからこそ絶対にミリオン(100万部)売れてほしいと思います。

番組では他にも、鈴木さんが今後の目標について語る場面もありました。


(左から)鈴木おさむさん、茂木健一郎



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4月20日(土)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月28日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00~22:30
パーソナリティ:茂木健一郎

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